AVは一線の向こう側

 その理由のひとつに、AV業界が「華やかに見える」ことがあります。AV女優がセクシータレントとしてテレビに出ることも珍しくない昨今、AV業界は芸能界の一部でもあります。そこはルックスやスタイルで競い合う選ばれた人々の世界。だから妙に気後れしてしまう気持ちがあるのです。

 もうひとつは、少しネガティブです。AVに対して、「一度出たら戻れないところに行ってしまうのではないか」という気持ちがわたしの中にあること。そう、まさに「身体を売ったらサヨウナラ」。顔を出して官能小説を書いたり、お下品なことを語ったりしている時点で、すでに「サヨウナラ」とも言えるのですが、けれどもAVに出ることにはもう一段、ハードルがある。

 かつてAVに出ていた友人が女優を辞めた後に、結婚したり出産したりと、ごく普通の生活を送っていることだって知っていて、美しい肉体を晒すのとあさましい妄想をだだ漏れにするのでは、どちらが恥ずかしいかというと後者である気もします。
人さまに堂々とお見せできるような肉体を持っているわけではもちろんないんですが、それでも若い頃はそれなりだったことを考えると、別に「脱ぐ」ことに抵抗があったわけではない。実際わたしは、ステージとかでは脱いでいました。

 それでも、わたしの中で、AVに出ることは、一線の向こう側にある。だからこそ、AVに出演するような「特別な人」は何を考えてどんな日常を生きているのか。そんな興味本位の気持ちで、スクリーンに向かいました。