おじさんは「頼もしい!?」
「オジサン好き」を表明する若い女性は珍しくありませんが、わたしも例に違わず、ハタチそこそこの若いムスメの時分には「オジサン」が好きでした。
なぜ「オジサン」が、好きだったのかというと「知らない大人の世界」を見せてくれるからでした。
六本木や麻布や恵比寿といった、ちょっと背伸びした街のオシャレな店に連れていってもらえること……
いやいや、そんなバブルくさい店ばかりではなくとも、「煮込み」や「しめ鯖」といった晩御飯の食卓で出てきたことのない酒のアテが豊富な大衆的な居酒屋や、安いけれども本場さながらに香辛料の利いた中華の店、車でないとアクセスが不便だけど行列が出来ているラーメン屋、自家製キムチとホルモンが絶品な焼肉屋などなど、それまでチェーン店しか知らないわたしにとっては、そのすべてが「知らない大人の世界」として、いちいちが刺激的だったのでした。
値段や敷居の高さや雰囲気に物怖じして、自発的には行かない、行けないような店に連れていってもらえること以外にも、「オジサン」にはステキなところがありました。それは、物知りなことです。
親元を離れてこれからどうやって生きていけばいいのか、まるでわかっていないわたしに、この世界のあらましや、仕事や働くということはどういうことなのかを教え諭してくれる年上の男性の存在は、社会という大海原に身一つでこぎ出したばかりのわたしには、とても頼もしく思えたものでした。