白昼の出来事
高校生活最後のゴールデンウィーク
高校生活最後のゴールデンウィークを迎える、少し前のことでした。
その日の放課後、わたしはいつも通りに西武池袋線に乗ると、池袋駅で降り、P’PARCOの先にある某デートクラブへと向かいました。
クラブに入ると、顔見知りの女のコたちがいて、なんてことない雑談をしていたら、ピンポンとインターフォンが鳴りました。
わたしはその日、他校の女友達と遊ぶ約束があり、その待ち合わせ場所として、そのデートクラブに集まることになっていました。
だから、指名は別に欲していなかった。
けれど、その日に限って、その客に選ばれたのです。
待ち合わせの時間までは、まだしばらくありました。
「30分だけお茶をして帰ってくればいいか」。
男性客から五千円もらえれば、今日遊ぶお金にもなります。
「○○ちゃんたちが来たら、すぐに帰ってくるって言っておいて」と受付の男性従業員に頼み、エレベーターを降りてマンションの一階のエントランスへ。
そこで待っていたのは30代前半の男性でした。
「どうします? とりあえずお茶でも飲みますか」と、連れ立って歩き出した瞬間です。
「ちょっと、いいですか。警察です」
見知らぬ男女の集団4人ほどが駆け寄ってきたかと思うと、わたしの腕をガシッと掴みました。
何も出来ぬままに、そのまま道端に止められたワンボックスカーに連れ込まれそうになり、とりあえずわたしは「助けてー!拉致られるっ!」と、叫びました。
先ほど合流した男性は、あっけにとられた様子でしたが、「警察」という言葉に正気に戻ったのが、さっさと、どこかに逃げていってしまいました。
代わりに、突然の真昼の捕り物劇を遠巻きに見ていたギャラリーのひとりの男性が、わたしを羽交い絞めしているひとりの肩を叩いて「警察を呼びますよ」と注意してくれたのですが、「いえ、わたしたち、警察なんです」と警察手帳をかざされて、次に制服姿のわたしを見て、「なるほど」と何やら納得した顔で、去っていってしまいました。
ジタバタと抵抗しながらも、車の中に連れ込まれると、助手席に座っている男性が、無線でどこかを通信を始めました。
その会話から推測するに、どうやらわたしは、このまま巣鴨警察署へと連れていかれる様子。
そう、わたしは、補導されたのでした。
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