既婚者の恋人が踏み込んではいけない「ふたりの生活」とは

既婚者が配偶者以外の男性と付き合うこと

大泉りか 官能小説 人妻は不倫の夢を見るか Laura Borges-Ribeiro

男性であれ女性であれ、既婚者が配偶者以外の異性と付き合うことの是非に関しては、それぞれの事情や愛や生き方があるので、特に否定も肯定もしたくない。
もちろん常識的に言えば「いけないこと」だろうし、そんなことをするなら「結婚なんてしなければよかったではないか」というのが正論ではあるが、けれどすべての人間がそんなに崇高な生き方が出来るわけでもない。

「結婚してひとりの人間と添い遂げること」は美しいことだと思うけれど、それに縛られるあまり、不幸になるのは少し違うと思うし、配偶者以外の異性と付き合うことで、上手く生きるバランスが取れるのならば、それは当事者にとっては致し方ないことだとも思う。

しかし、致し方ないのは、あくまでも当事者にとってのみ、配偶者をそこに巻き込むのは如何なものだろうか。いわんや、配偶者にとって、本来はまるで関係のない不倫相手が巻き込むのは論外だと思う。

ある時のことだ。既婚者の男性と、何年にも渡ってお付き合いしていた未婚女性の知り合いが、お茶を飲んでいる最中に、こんなことをわたしに漏らした。

「既婚者と付き合ってよかったのは、わたしも独身男性と『本命』として付き合っていた時は、関係にあぐらをかいていたということを知ったこと。『本命』や『奥さん』はやっぱりそういうものなんだよね。恋人や旦那さんとの関係にあぐらをかく」と。

ひとりの既婚の女として「あぐらをかいている」と言われたら面白くないことは、確かだ。けれども、違う場所にいる人には、まるで違う風景が見えていることもある。ならば、それはどういう風景なのかを探りたい。なので、「それってどういうこと?もう少し説明を」と尋ねたところ

「結婚しているという事実に浸かりきって、奥さんの家での態度がひどいみたい。奥さんがそうだからこそ、わたしが彼に求めらた……(以下略)」

というので、こちらとしては「あぁ、結局愛されているのは、自分の方だということを主張したかったのね」と思う一方で、「奥さんの、夫に対する家での態度をどうやって知ったのか。男の口から出たそれをなぜ真実だと信じられるのか」と若干鼻白んだわけですが、さて、我が身を振り返ってみると、夫に対してわたしは、果たして『あぐら』をかいているのだろうか、ということです。