愛する人に捨てられた悲しみからの再起
この映画は地上の愛と地下の愛があると書きましたが、最後に地下の愛のお話を。
地下の物語は、西田敏行演じる謎の老人とおもちゃたちの物語。「園子温版トイ・ストーリー」とも評されるファンタジックで楽しいパートです。
しかし、このおもちゃたちは持ち主に捨てられて流れてきた、言わば廃材寸前だったもの。そう、おもちゃたちの心は荒んでいるわけです。
「昔はあんなに愛してくれたのに…どうして私を捨ててしまったの」
なんて昔愛した人を恨みつつも、どこか愛が残っているというモヤモヤをおもちゃたちは抱えているのです。
(C)「ラブ&ピース」製作委員会
そんな傷ついた心を西田敏行演じる謎の老人は癒していきます。そして、おもちゃたちが新しい愛を注いでもらえるように綺麗にして送り出していくのです。
人間とおもちゃというファンタジックなストーリーではありますが、これは恋愛における「傷ついた人とそれを癒して背中を押す友人や家族」という構図にとても似ています。
傷ついている人がいたら、癒して送り出してあげたい。その人(物)が新しい愛を注がれて笑顔を取り戻し、幸せを取り戻すために。
『ラブ&ピース』は、園子温監督にしては珍しく、性的にも暴力的にも際どいシーンが一切ないので、大人も子どもも、安心して優しい優しい愛を感じることができます。
この週末、カップルや友人、ご家族で、至福の時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。