クズ男を一辺倒で非難しないであげて

柳下修平 ラブ&ピース 映画 (C)「ラブ&ピース」製作委員会

 この映画の主人公鈴木良一は、典型的なクズ男。でもだからこそ共感できる。

 整理してみましょう。

・ヒゲの手入れもしてなくて、挙動不審。友だちがいなくて、どう見ても童貞な30代半ばの男。

・でもそういう男でも好きな人くらいいるわけです。それが会社の同僚。

・その同僚は地味で身体のラインも太め。でもその女性のことが大好き。「裕子ちゃんが大好きだ!」と亀に言っちゃう。

 つまり「醜男に好きな女性がいる」というのが基本設定ですね。

 醜男とは、自らの手入れしていない、自信がない男です。だから、ロックミュージシャンとして名を馳せたら垢抜けちゃって自信も付いちゃう。良く言えば自分らしくなった、悪く言えば調子に乗るようになるわけです。

 最初こそ、その女性といい感じになるものの、モテ始めると煙たく感じ無視したりと、酷い仕打ちをしてしまう。

柳下修平 ラブ&ピース 映画 (C)「ラブ&ピース」製作委員会

 女性のみなさん、ここまでのサクセスストーリーじゃないにしろ、周りにこういう人いませんでしたか。会社で下っ端だった時は自信なさげだったのに、出世して自信が付き始めたら調子に乗ったり女を粗末に扱う男。

 鈴木良一は、そういう典型的なクズ男です。
しかしクズ男ってある意味どこまでもクズ男で、自分の身の丈を知ったり、ふと自信がなくなると我に返ってしょぼくれちゃう、ガラスのハートの持ち主だったりもするのです。

 過度な自信や垢抜けたように見えるビジュアルは、あくまでも本当の自分をコーティングしているメッキでしかない。そのメッキが剥がれた時、コーティングする前以上に心は荒み、人の温かさがほしくなる。

 結果、自分が粗末に扱っていた、母性的な女性を求めるのです。

『ラブ&ピース』中盤の鈴木良一のように調子に乗っている男は世の中にはたくさんたくさんいます。しかしそれはメッキでコーティングしている姿。
そのメッキに「カッコいい」と憧れるのではなく、そのメッキが剥がれた時の姿も愛せると思ったら、是非その人を愛してあげてください。

 男は弱い生き物ですから。