「奥さんが先に亡くなるも、後から手紙が届く」というあらすじは、映画『P.S.アイラブユー』を彷彿とさせましたが、蓋を開けると全く別の映画でありました。
原作はエドワード・ムーニー・Jr.の小説『石を積む人』。映画化に当り、舞台は北海道へと変わります。美しい北海道美瑛の風景が四季折々にスクリーンを彩るのも本作の魅力です。
佐藤浩市と樋口可南子演じる夫婦は、絵に描いたような仲良し中年夫婦といったところでしょうか。不器用で無愛想な夫とお喋りで明るい妻。それが夫婦のバランスをうまく取っていて、無愛想な夫から溢れ出る隠すに隠せてない愛情が見ていて微笑ましくなります。
この無愛想で不器用なダメ夫を、佐藤浩市は魅力たっぷりに演じます。妻がいないと何もできない夫なんです。しかし、妻には持病があり長くは生きられないかもしれない。それを覚悟していた妻は死後を案じて、独りになる夫のために準備をし始めるのです。
それが手紙。複数用意された夫への手紙が旦那の残りの人生を奮い立たせるのです。
その二人の夫婦の物語は映画の半分。もう半分は高校生カップルの波瀾万丈なエピソードを描いています。
このカップルは、佐藤浩市と樋口可南子演じる夫婦の家の石塀作りの手伝いで派遣された、野村周平演じる杉元徹という高校生と、その彼女で杉咲花演じる上田紗英。この二人のエピソードが小さな街での事件へと発展します。
夫と妻、父と子、母と子、自分と他人、恋人など、様々な人と人との繋がりが「愛を積み」、「愛を紡いで」いきます。
自らが愛情を抱く人を想像して見ると良いかもしれません。この愛情は男女に限らず、誰を思って見ても、きっと登場人物と当てはめることができるはずです。
特に既婚者や子持ちの方は自らの対象者を思い、愛が溢れ涙が止まらなくなるかもしれません。