「性と生」
セックス描写の美しさは、人間の美しさ、そして「人間って悪くないかも」ということに繋がります。つまり「性と生」です。
セックスとは恋人同士、いや、付き合っていなくても性的衝動に駆られる行為です。
快楽や刺激、ストレートに言えば気持ち良さを追求するのが一般的ではありますが、人間という種が半永続的に存在するための、究極的には子孫繁栄のための手段・行為になります。
『寄生獣 完結編』のセックスは、高校生同士の行為かつ、たった1回なので子供は宿りません。しかし、この作品は人間の存在意義そのものを問いているので、セックスという行為を入れたことに意味があると思っています(原作でもあるようですし)。
美しきセックスは人間の美しさを示すもの。美しき愛の形は人間の美しさを示すもの。
人間はありとあらゆるゴミを出し、他生物の承諾なしに「食物連鎖」というあたかも正当な理由を掲げて命を奪ってきました。
そんな実態を踏まえた上で、「人間は悪しき生物かもしれないけれど、全てがそうではないんじゃないかな?」を『寄生獣 完結編』は示してきます。
映画におけるセックスを見ながら、実際にセックスをしながら、人間の存在そのものや子孫繁栄を真面目に考える機会なんて普通はないでしょう。
映画のセックスは二人の気持ちにフォーカスして、それがレイプシーンなら被害者と加害者の気持ちに思いを馳せる。
実際にセックスをするなら、目の前の相手を思い、自らの快楽を感じます。「人間とは?」なんて考えません。それが普通であり、それで良いのです。
『寄生獣 完結編』は“美しきセックス”としての魅力を放ちながら、「人間とは?」を考えさせます。しかし、その答えは「こうだ!」と正解を示すわけではありません。
私たちが悩み考えて、仮に答えを出せなくても、その考える行為から「生きる」ことの意味を改めて感じることができます。
『寄生獣 完結編』の美しきセックス。でも、それは映画の一側面の一魅力でしかありません。
本作の広義テーマは、エンターテイメント映画です。前編『寄生獣』と合わせて、是非ゴールデンウィーク期間中に楽しんでみてはいかがでしょうか。
絶賛公開中!
監督・VFX:山崎貴
キャスト:染谷将太、深津絵里、阿部サダヲ、橋本愛、新井浩文、岩井秀人、山中崇、ピエール瀧
配給:東宝
2015年/117分/PG12
URL:映画『寄生獣 完結編』公式サイト
Text/柳下修平