短歌は「一点豪華主義」!

 さて、たむこさんからいただいた短歌はこちら。

恥じらいで灯りを消して初挿入 暗闇の中 激痛走る(たむこ)

 これはもったいない! あらすじだけをたどってしまって、せっかくの怨霊がすくいあげられていない気がします。

 短歌は「一点豪華主義」みたいなところがあります。腕時計が高級だと、安くてシンプルなワンピースも不思議と高級感が出るという、あれです。

 ファッションと同じで、短歌の中に話のすべてを盛り込もうとすると、ごちゃごちゃして平凡な見た目になってしまいます。

 どこか一点、売りになりそうなポイントを拡大して切り取ると、結果的にその背景の物語も伝わったり、受け手が脳内で補完してくれたりするものです。

 たむこさんのエピソードの怨霊ポイントは「暗闇」に潜んでいる気がします。

 たとえばこんな部分を切り取ってみたらどうでしょう。

暗くして あなたの顔はよく見えてわたしのおなかは見えないぐらい

「恥じらい」と「暗闇」の理由を拡大して、具体的で都合のいい願望に焦点をあててみました。でも照明問題の本質って、こういうことだよね?

 男の側の願望に焦点をあてたら、こんな感じ。

もうちょっと明るくしてもいいかなと訊いても処女は暗い目のまま

 男のエゴとともに、女の子の悲しい痛みも伝わってるのではないでしょうか。

 でも、ちょっと殺伐としたラブホテルの光景になっちゃいましたね。男のほうが脂ぎった中年っぽいのも、美しくない。

 そこで、たむこさんの送ってくれたエピソードに入っていた「雨戸」という、なんだか象徴的なアイテムをお借りして、青春っぽく切り取ってみます。

どちらともなく「しようか」とうなずいて雨戸を閉める処女と童貞

 何も書いてはいないけど、その後の暗闇は想像できるかと思います。

次週も引き続き「初体験の思い出」を募集!

 というわけで、次週も引き続き「初体験にまつわる怨霊ラブメモリー」を募集します。

「痛かった」などの感想だけよりも、具体的な場所とかアイテムとか相手の特徴とかが出てくるエピソードのほうが、業の深さ、怨霊度の高さがみなさんに伝わりやすいのではないかと思います。エピソード、こちらで編集しますので、長く書いていただいても大丈夫ですよ。

 こちらのフォームから、ご投稿お待ちしております。

 では、2015年もどうぞよろしくお付き合いのほどを。

Text/佐々木あらら