秘密主義男子の本心は?

さきほども少し触れましたが、洸は、高校生にしては、かなりヘビーな経験をしているキャラクターであり、その全てを同年代の双葉たちが理解するのはやはりどうしても難しいのです。
その意味で洸は大人読者の保護者意識を刺激する王子様だと言えるでしょう。本人の口ベタもあって、周囲にはなかなか理解されない洸の心を、わたしだけが分かってやれる。そんな優越感をくすぐってくるのです。

しかし、ここで重要なのは、洸が秘密をエサに女を釣る遊び人とは違うのだということ。「こんな話をするは、君だけだよ」みたいなことを言って、女をうっとりさせる恋愛詐欺師がいますが、洸は自分からは何も言いません。
双葉たちに無理矢理心の扉をこじ開けられたり、神視点を持つ読者に全て見抜かれたりはしますが、自分から何かを打ち明けようとはしない。そこに、洸の愛されポイントがあるのではないでしょうか。
洸の魅力は、他者によって発見され、分析され、理解されるタイプの魅力なのです。

そして、実は洸のお兄ちゃんである田中先生(彼はみんなが通う高校の教師をしています)もまた、なかなか本心を語らないタイプ。
この兄弟、揃いも揃って秘密主義というか、ほんとにアピールしない男子だな(超ステキ)。

9巻での洸は、ようやく双葉への想いを確かなものにし、動き始めます。
高校生の恋愛モノだからといって「もう高校生じゃないし」「こんな恋愛あり得ないし」なんて言っているヒマはありません。洸が自分の言葉で語れるようになるその日まで、みんなで彼の心を見守り続けようではありませんか。

Text/トミヤマユキコ

初出:2014.05.05