あなたはどっち派だった?90年代を代表する『ピーチガール』のデキがいい男の子たち

 少女マンガに登場するステキな王子様に胸をときめかせていたあの頃——いつか自分も恋をしたい。そんな風に思いながら、イイ男とは何か、どんなモテテクが効果的なのか、少女マンガを使ってお勉強していたという人も少なくないハズ。

 時は流れ大人になっても、少女マンガによって植え付けられた恋愛観や理想の王子様像は、そう簡単に劣化するものではありません。むしろ王子様の亡霊に取り憑かれて、リアルな恋愛がしょぼく思える人もいたり? この連載では、新旧さまざまなマンガを読みながら、少女マンガにおける王子様像について考えていきます。

第13回:「ほんわか」とは対極な90年代の象徴
『ピーチガール』

漫画『ピーチガール』の表紙画像 『ピーチガール』1巻/上田 美和(著)/ 講談社

 少女マンガの実写化ラッシュが止まらない今日この頃ですが、まさか『ピーチガール』が映画化されるとは! すごく気になる! 今すぐ観に行きたい!

 同作は、キャラの濃すぎる登場人物たち、ダイナミックなストーリー展開、エロはギリギリまで攻める、などなど、その全てが「ほんわか」の対極にあるのが特徴。
少女マンガだけれど、まるで『少年ジャンプ』でも読んでいるかのような気持ちになれる作品を実写版がどれだけ再現できているのか、確認したくて仕方ありません。が、その前にひとまず原作をおさらいしておこうではありませんか。

タイプ違いの男子を行ったり来たり…贅沢だ!

 ヒロインの女子高生「もも」は、見た目こそガングロのコギャルですが(作品が連載されていた90年代はコギャルブーム全盛期)、好きな人に告白することすらできない、とてもピュアな性格の持ち主。ほんとはいい子なのに見た目で誤解されちゃうキャラです。

 そんなももの前には、ふたりの王子様が現れます。一人目は、中学生の頃からずっと好きだった「とーじ」。爽やかなスポーツ青年で、ももが“男遊びの激しい子”であるといった事実無根のうわさ話をきちんと訂正し、恋人の幸せを考えたら敢えて身を引くことだってできてしまう。つまり非常に健康的で品行方正な男子です。
そして二人目は、チャライケメンの「カイリ」。学校イチのモテ男でちょっとスケベ。周りには常に女の子がたくさんおり、デート相手には不自由しませんが、実は昔からずっと好きだった人がおり、不器用な恋心にフタをして暮らしている男子です。

 ももの天敵「さえ」は死ぬほど底意地の悪い女で、ももが自分より幸せになるのを絶対に許さない、というタイプなため、ももは無骨でまっすぐなとーじと、ちょっぴり甘えん坊のカイリの間を行ったり来たり。
最初はとーじとうまくいきそうになるのですが、さえに引き裂かれ、そのことで落ち込んでいるとカイリが慰めてくれて、都合がいいと思いつつも彼の優しさに身を委ねてしまう。
昔から好きだったとーじの男らしさにしびれながらも、女心を理解できて、さえのぶりっ子演技にも決して騙されないカイリも捨てがたい……って、なんて贅沢な悩みなんだ!