『アルマゲドン』で号泣する男を笑っちゃダメ?/ジェーン・スー書籍先読み(6)

「ジェーン・スーのチャット相談室」連載で御馴染みのジェーン・スーさん、初の書籍『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』発売を記念して、書籍に掲載されている101個のコラムのうち10個を、AMで独占先読み企画として公開!
本の発売は10月12日ですが、その前にぜひ、こちらで試し読みをしてみてください。

【前回の記事はコチラ】
【5】独身は麻薬(シングルイズドラッグ)!快楽からは抜け出せない?

【6】『アルマゲドン』を観て泣いている彼をバカにした。

 たとえ今の姿がヒーローからは程遠くとも、
男のヒーロー願望を、男の目の前で笑うのはやめておこう。

ジェーン・スー 私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな ポプラ社 イラストレーション:サヲリブラウン

1998年に公開された映画『アルマゲドン』。
石油掘削隊の男性14 人が、命を懸けて、小惑星が地球に衝突するのを防ぐために核爆弾を仕掛けに行く―言わずと知れた大ヒット作です。
この、私にとってスティーブ・ブシェミが出ていること以外に観る理由がない映画を、心から楽しめる男だっています。
蛇足ですが、あれだけ男優が出ているのに、ブシェミにしか目が行かない私が、親を安心させるような結婚などできるわけがない。

さて、ずいぶん昔の実話です。レンタルビデオ屋で、ふと当時の男が「『アルマゲドン』観たいな~」と言った瞬間、私の口を突いて出た言葉は、
「ああ、あのコメディ?」
はい、出ました、なんちゃって世相斬り。ハリウッドを斜めから見るだけの、安直なポジション取り。もちろん、大変嫌な顔をされました。

『アルマゲドン』のように、男が自己犠牲の精神で人類と地球を守る物語は、男性のナルシシズムやロマンチシズム、なによりヒーロー願望を満たします。

つまり私は『アルマゲドン』をバカにすることで、彼のイズムそのものを否定してしまった。 なんて不粋な女!
この話で一番マズいのは、私が彼に満たされていたのは、このアルマゲドン的メンタリティの派生商品(女に車道側を歩かせない、重い荷物は率先して持つなど)による乙女心だったにもかかわらず、それを鼻で笑うようなことをしたことです。
ヒーロー願望をバカにするなら、男にヒーローたることを求めるのは筋違いでした。

おんなじような話ばかりで恐縮ですが、都合のいい場面でだけ「好きなら、どうして私のことを守ってくれないの?」と言うようなことをやめないと、いつまで経っても、誰に愛されても、不満と不安が残ります。
さぁ、そんな愚行は私たち未婚のプロがやっておくから、君たちは先をゆけ!(ここでエアロスミス流れる)

ジェーン・スー 私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな ポプラ社

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