瀬戸内寂聴原作!満島ひかり×綾野剛×小林薫が三角関係に揺れる『夏の終り』

【今回は「密かに磨く、エロしぐさ」で連載中の鈴木みのりさんによる特別編!
満島ひかりさんの妖艶な演技からイロイロ学べそうです。】

 瀬戸内寂聴さんが1963年の女流文学賞を受賞し、作家としての地位を確立する契機となった短編小説『夏の終り』を原作に、『ノン子36歳(家事手伝い)』、『海炭市叙景』などで不器用に生きる人々を描いてきた熊切和嘉監督によって映画化、そのうえ寂聴さんの実体験をベースにした私小説の主人公・知子を演じるのは今もっとも旬で他の追随を許さない全身全霊の演技が光る満島ひかりさん。

夏の終り 熊切和嘉 宇治田隆史 瀬戸内寂聴 新潮文庫刊 満島ひかり 綾野剛 小林薫 クロックワークス
©2012年映画「夏の終り」製作委員会

 この三拍子だけでも観たい衝動が抑えられないけど、それに輪をかけて、寂聴さん自身の不倫体験と、同時にあった三角関係を下敷きにこの作品が書かれたと聞き、わたしは一層この作品への興味を強くした。

 わたし自身、既婚の男性と恋愛関係にあった時期があり、また、時を同じくして年下の男性との関係を持ち、別の既婚男性からのアプローチを受けていた経験があるからだ。


女性が社会進出していない昭和30年代
手仕事に誇りを持ち、心情を反映させる知子の美しさ

 だらしなく放り出された足、陽が射す部屋でなまめかしく照る鎖骨、毅然とした背中から後頭部にかけて色っぽく曲線を描くうなじ。
30代半ばという自身の実年齢より10歳は年上で、複雑な関係にある知子を演じる難しさに「現場でももがいていました」と本作の完成披露にて語った満島ひかりさん。
彼女との仕事を熱望していた熊切監督は、「満島さんを凛と美しく撮りたかった」と言う。

熊切「知子の職業は染織家なんですが、原作では設定だけでその詳細にはあまり触れられていなくて、映画ではその辺をちゃんと見せないと、下手したらただのだらしない女の人と思われそうだなって。
自立して、ちゃんと自分の仕事を持っていて、そこにプライドがあって、という風に撮ろうと思っていました」


 鑑賞後に大きくわたしの心に残ったのは、知子が映画の最初から最後まで、きっちり仕事に従事している点だった。
知子の生業である型染めの作業をはじめ、手仕事の細かい動きが、彼女の爪先まで見えるほどにたんねんに捉えられ、ちりばめられていた。

熊切「調べてみると型染めは作業工程が単純におもしろく、同じ物作りをする人間として、その作業を見せることで言葉以上に心情が表せると思い、力を入れて撮っています。
満島さんの手が独特で、指が長くて節ばっていて、良い特徴のある手だったんです。あの手で知子の本心を表して欲しいと思い、本当はとても難しい作業なんですが、これはもう本人にやってもらわないと、と」


 撮影前にストイックに染色の技術を学んで、満島さんは撮影に臨んだそうだ。
たしかに作品では、黙々と作業にかかる動きも表情もなめらかで美しく、熊切監督の言うように、知子の自分の仕事への誇りに説得力を持たせていて、それが本作の強い希望としてわたしの目には映った。