「旦那が親友」という関係
日仏カップルの友人の1人が、フランス人旦那にある日こう聞かれたらしい。
「パリでの親友は誰なの?」
海外に住む、特に長期滞在の日本人にとって「友人」というのは、壮大なデーマである。パリという異国で気の合う日本人と出会って、友人になるということが案外難しいからだ。
なぜかこの街には日本人女性がウヨウヨいる。パリに惹かれて来ている人から、旦那の仕事の都合で来ている人、自分の夢を叶えるために来ている人までみんなその理由はさまざまだ。
日本人が結構いるとはいえ、日本にいるときよりその種類というのはごく限られている。そしてちょっと特殊だったりする。
そういう私も含めてそうだけれど、海外に好きで住んでいる日本人は、日本ではたいがい「変わっている人」だったことが多い。
だからなのか?そう簡単に友人はできない。
いくらパリが好きで住んでいようと日本語で愚痴りたくなることだってある。そんな時に非常にありがたいのが日本人の友人なのだ。
異国での友人というものは、日本にいたときよりずっとずっと助け合い連帯が強い。何かあったときに助けてもらえる人が、フランス人より日本人であることがいかにありがたいことか。身にしみて感じることがよくある。
だからやっぱり日本人の友人は必須なのだ。
これまで長く続いている友人との出会いは語学学校であることが多い。毎日顔をあわせていれば共有している時間が多いし、どんな人かもわかりやすい。
とはいえ、なんだかんだいってここは海外なので、ビザの問題やらで時間が経つと日本へ帰ってしまう友人も多い。せっかく仲良くなったのに、話が合う人ほどパリを去ってしまう気がする。
こうして友人が減って行くたびに
「ああ、友人ってなんなんだろう?」。
こんなことを30代半ばにして真剣に悩んでいるのである。
なお、先の旦那に「君の親友は誰?」と聞かれた友人は、「あなたよ」と答えたそうだ。
フランス人の彼と恋をして、結婚して、彼の生まれた国に移住してまでして一緒にいる相手 。その彼が人生のパートナーであり、親友でもある。
「私の親友はあなたよ」
という返答はとてもロマンチックだけれど、それじゃなんだか現実的には危なっかしいと思ってしまうのは私だけだろうか?
Text/中村綾花
初出:2015.09.27