自分のプライドを、自分なりに守る

パートナーの浮気を許すのは、とても困難なことです。
これまで築き上げてきた信頼や愛情を一気にひっくり返されては、簡単に忘れられるわけがありませんし、いつまでも「また浮気されてしまうのでは?」と不安が付きまといます。
たとえGPSをつけてスマホをチェックしてギッチギチに行動を縛ったところで、次第に息苦しさを感じた相手はかつての最悪な行いを棚に上げて外に癒しを求めようとしますし、かなしみを押し殺し、寛容な対応を心掛けて放っておいたら、「これ幸い」とばかりに舐め腐った根性で舌の根の乾かぬ内にまた浮気をするかもしれませんし、はっきり言ってお手上げです。
どんな状況でどれほど厳しく制限されていても、ちょっとした合間を見つけて浮気をする人。どれほど理性を試される状況でも決して浮気をしない人。一度浮気をしたことがあってもよっぽどの痛い目を見たことで心を入れ替えてそれっきりにする人。
人それぞれタイプが異なりますが、彼がどんなタイプかわかったとしても、どう対応していくのが最善なのかはきっと誰にもわからないことだと思います。

彼は浮気をする人間だと受け止めて黙認するか、問い詰めて制限をつけるか、すっぱり別れるか、決めるのはあなたです。
とても難しくて、どうしたって苦しみが伴う未来を容易に想像できますが、答えを出すにあたってどうか自分のプライドを守ってほしいと思います。
浮気をされた時点であなたのプライドはズタズタに傷ついているかもしれませんが、それでも今のプライドを精いっぱい守ってください。

わたしも、以前お付き合いをしていた人に浮気をされたことがあります。
その人とは同棲こそしていませんでしたが、毎週末は相手の家で過ごすのが当たり前になっていました。
付き合って3年ほど経ったある日、彼の仕事中に部屋の掃除をしていたところ、クローゼットからジェラートピケのルームウェアが出てきました。
彼の帰宅後すぐに問い詰めたところ、「母親のだよ」とあからさまな嘘をつかれたのですが、わたしはそれ以上追及することなく「そんなわけないでしょ。浮気するならバレないようにもっと賢くやりな。次にわたしが来るまでに処分しておいてね」と伝えて話を終えました。
後日、再び彼の家を訪れたときに、件のルームウェアが捨てられておらず、別の場所に隠されているのを発見したのです。
わたしはそれを綺麗に畳んで玄関の置き、彼に何も言わず、一切問い詰めず、何食わぬ顔で過ごしました。

この一件があってからも彼とは付き合い続け、そこからさらに1年以上経った頃に別の理由で別れたのですが、最後まで一度も浮気について言及しませんでした。
でも今振り返ってみると、もっと他にもやり方があったのかもしれないな、とは思います。
その場で問い詰めることもできましたし、すっぱり別れておけば時間を無駄にすることもなかったんだろうな、と考えたりもします。
しっかり傷ついていながらも、見て見ぬふりをして寛容な彼女を装っていたのかもしれません。

ただ、当時のわたしは「それくらいで動じる女だと思うなよ」「あなたが誰とどんな風に遊んでも、結局本命はわたしなんでしょ」と、自分のプライドを守っていたのです。
わたしのプライドは「彼のことをこの世で一番好きなのはわたしだし、この人を幸せにできるのはわたししかいない。だから、それ以外のことは二の次で、彼を好きだという気持ちを最優先にする」でした。
たとえ浮気が発覚したあとの時間が無駄だったとしても、彼に「浮気を見逃してもらえてラッキー」だと思われていたとしても、浮気相手の女性に彼の浮気を黙認するバカで無様な女だと思われていたとしても、プライドを守った事実に今でも胸を張れます。
それは、今の自分を構成するうえで大事な要素だったと思いますし、わたしの人生ひいては今の幸せにしっかり活きているという実感があります。

人それぞれ、持っているプライドは異なります。
「浮気ごときで別れて堪るかよ」と全てを知り尽くしたつもりでドシンと構えて余裕のある振る舞いをすることも、「くだらねぇウソなんてつきやがって! 自分がどれほど最低なことをしたのか身の程を知れ!」とガンガン詰めることも、「この程度の男にわたしの貴重な時間を費やしてられっか!」とスッパリ別れることも、各々が自分のプライドを守る行為です。
他人に「そんな男とっとと別れなよ」と言われようが、「あんまり束縛するのは逆効果だよ」と言われようが、「長く付き合ったのにたった一回の浮気で別れちゃうなんてもったいないよ!」と言われようが、自分のプライドを優先してください。
人生で一番大きく後悔するのは、自分が納得できない選択をしたときです。

どんな選択をしても、苦しい時間は避けられないかもしれません。
「もっとこうしていれば……」とタラレバ思考が勢いよく押し寄せてくる瞬間があるかもしれません。
目先のかなしみを回避することも、今大爆発している感情を抑制しようとすることも、大切です。
だって、誰しもしんどいときには心の安寧を求めてしまうものですから。
だからこそ、その結果が上手くいったとしても、上手くいかなかったとしても、あなたにはあとから自分で自分を誇れる行動をしてほしいと願っております。

Text/ものすごい愛
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