ヒモを養っていた女の子だった私

私はもともと「人に何かしてもらう」ことが苦手で、「人に頼むなら自分でやってしまえ」精神で生きてきたので、27歳まで事務所にも所属しないでフリーで活動してきたし、事務所に所属している現在もやはり自分で色々な物事を進めがちだし、その方が生きやすい感覚がある人間なんですね。

今回の舞台の主人公の「安藤」という男は「バイトが長続きせず、何でも人のせいにしては仕事をやめ」を繰り返し、その都度優しくしてくれる女性に甘え、謎の共依存を生み出す大変に厄介な人物です。
当時私は彼氏から「前の彼女」を比べられながら同棲をしていたので、とにかく前の彼女が受け入れなかった部分全てを私が受け入れるところを見せて、「私の方がいい」と思ってもらえるように務めていました。

彼は前の彼女が世界で一番タイプ。顔がとにかく好き。けどフラれた。
傷心してる時に出会ったのが私。私は彼のことがめちゃくちゃ好きになったので、なんか付き合うことになって、けど彼は前の彼女が忘れられない。ちょいちょい前の彼女の話になり、話を聞いていると「あー全然私のことよりまだ昔の彼女が好きなんだなー」と思う日々。みたいな恋愛でした。

これ、今になって自分が改めて文字にすると「いやいや、マジで前の彼女と比べるような奴のどこが良かったの?」とツッコミが止まらないのですが、当時はそんなこと気がついてないわけですよ。若かったしね。あ、でもこれ本当にお伝えしたいんですけど、「誰かと比べる男」と一緒にいていいことまじでないです。好きで盲目になっているときに比べられると、頑張ろうとか思いがちですが、そんな頑張り方しない方が幸せに生きていけると今のわたしは思っています。が、しかし当時のわたしは好き好き大好き盲目女だったため、「彼が暗い気持ちになったなら私が何とかしてあげたかった」し、「暗い気持ちになるならバイト行かなくてもいいよ?」と優しいんだか何だかわからないことを言っていた記憶があります。

それが割とまんま今回の台本に書かれているので、本当にそうだったんだと思います。
そこで彼のご機嫌とりみたいな行動をして、そうするとどんどん彼はわがままになるし、いろんな言い訳が増えて、結果「マジでそんなわがまままで聞いてらんねーよ!!」と私の限界がきて、喧嘩になる。その悪循環を3年繰り返して最終的に浮気されて別れたんですが、この3年で私はかなり自分でお金を稼いで、誰にも頼らず暮らしていく力をつけたように思います。

「それって女の子に必要?」って思う人もいるかもしれないけど、私は仕事をする上でこの力がめちゃくちゃに役立っています。要領が悪く、バイトがうまくいかない彼と一緒にいるには、私が要領良く働き、なおかつ何より大事な演劇を楽しんでやっていける環境を自力で作らなければならなかったから、自然とそうやるようになってました。

私はもともと「誰かに勝ちたい」とか「ライバル!!」みたいな気持ちが全然ない人間なので、いわゆる「ヒモを養った」経験がなければここまで仕事頑張らなかったかもしれないです。くだらない話に聞こえますがこれ結構本気で思っていて。私もヒモを育てたけど、私もヒモに育てられたのかもしれないなと。

超、自己肯定しようとしている30歳にも見えますねこれ。(笑)

一生分のマリア

このコラム依頼をもらった直後、今回の舞台の主演と音楽監督を務めてくださっている清竜人さんと話していた際、この「安藤」の話になり、私が実体験を元に書いた話をしたら、竜人さんが小さいな声でぽろっとこんなことを言いました。

「根本さんはマリアなんですね。」

どんな自分の自己肯定より、この一言に私の「ヒモとの歴史」が救われたような気がしました。
そんな気がした後また色々考え、「マリアでありたいけど、永遠にマリアやってらんねーな」とも思った私でした。わたし、一生分のマリア20代で使い切ったかもしれん。

奇しくも、わたしの次回作のタイトルは
「超、Maria」
巡り合わせやタイミングって面白いですね。

ヒモとの歴史「今、出来る、精一杯。」
マリアの歴史「超、Maria」
どちらも良かったら是非。

Text/根本宗子

「今、出来る、精一杯。」

日時:2019/12/13(金)~12/19(木)
会場:新国立劇場 中劇場

作・演出:根本宗子
音楽:清 竜人
出演:清 竜人、坂井真紀、 伊藤万理華、瑛 蓮、内田 慈、今井隆文、川面千晶、山中志歩、春名風花、小日向星一、根本宗子、riko、天野真希、田口紗亜未、水橋研二、池津祥子
演奏:岩永真奈、大谷愛、二ノ宮千紘、三國茉莉
詳細は公式サイトよりご覧ください。