前回の記事「妹尾ユウカ、20歳でデキ婚します。」
11月27日、午前3時28分。
10ヶ月以上もの長い間、一心同体で過ごしてきた娘とようやく顔を合わせることができた。予定日を6日過ぎての出産だった。
陣痛が始まってからの約15時間は永遠に感じるほど長く、人生で初めて「誰か殺してくれ!」と本気で思うほどの痛みで、実はあまり覚えていない。唯一、ハッキリと覚えていることといえば、嘔吐する私を横目に旦那が弁当を食べていたこと。「気にしないで……ほっといて……」とは言ったけれど、「弁当を食べるという選択肢があるのか!」と薄れ行く意識の中で驚いたのを覚えている。
そんな苦行を終えてすぐ、私の腕の中におさめられた娘を見ても「死ぬかと思った……」以外の感情は沸かなかった。
「ただ元気でいてくれたらいい」
出産から1日が経ち、改めて娘を抱いた朝。
ようやく自分が産んだ実感と無事に生まれてきてくれて本当にありがとうという思いから、涙が止まらなかった。妊娠中はイマイチ分からなかった“親になる自覚”というものが、このときやっと分かった気がする。
私が子どもの頃に、母が言ってくれた「ただ元気でいてくれたらいい」という言葉。「健康が1番。とにかく元気じゃないと」という祖母の口癖の意味をようやく知った。
「ただ元気でいてくれたらいい」は本当だった。
まだ少しぎこちない私の腕に抱かれて眠る、こじんまりとした娘の寝顔を見ていると、文字通り「ただ元気でいてくれたらいい」そう思った。それ以上の願いは見つからなかった。
21年前。母も私に対してこんな想いを抱いていたのかもしれない。そう思うと、私は母のためにも、幸せでいなくてはいけないと思った。
- 1
- 2