童貞を切り裂く言葉の切れ味
一介のライターとしてAM編集部をヨイショしておくと、AMはライターを褒めて伸ばすタイプの編集者さんたちばかりで、われわれはとても気持ちよく書ける。きつく言われたことなど一度もないし、お会いした印象としても、柔和で優しい方々ばかりである。
だが、『恋愛メディアがひろってくれない童貞の疑問を解決する本』を読んでみると、まるで印象が違う。
Q.よく目が合う女の子がいるんですけど、その子は僕のこと好きですか?
A.勘違い
Q.なんで女性は顔と金ばかりで内面を見てくれないんですか?
A.残念なお知らせですが、見てます
Q.ヤリマンなのにどうして僕とヤッてくれないんですか?
A.うるせえな
「うるせえな」、これである。童貞に村でも焼かれたか? というほどの怒りに満ちており、一言一言の重みと切れ味がマジすぎる。
私に一番響いたのは、このQ&Aだ。
ううあああああああああああああああああああああああああああああ
(何か記憶の扉が開かれたらしい)
女性の中にも住んでいる「ちっちゃい童貞」
取り乱してしまって申し訳ないけれども、おそらくまだほとんど注目されていないのが、編集部からの回答の後に、AMの記事が紹介されているということだ。
私のトラウマをほじくったLINEの既読問題のページで紹介されているのは、桐谷ヨウ(ファーレンハイト)の「『返信してよー!(笑)』 男がウザいと感じるLINEの特徴」。
読んでみると、「『返信してよー!(笑)』なんてメッセージを送ることがいかにクソか?」、「ほとんどの女の子は些細なやり取りが出来ることを好む。これも苦手な男が圧倒的に多いことを認識してほしい」などと書かれている。極めて性行為の経験が乏しい女性向けAVの研究者は黒歴史にのた打ち回っているというのに、さすが自称「元・脱力系ヤリチン」は言うことが違う。女性に対して上からイケる。
結局、童貞もAM読者の女性も、同じことで悩んでいたりするのだ。ここから気づかれるのは、女性の心の中にも「ちっちゃい童貞」が住んでいるということである。
本書がいう「童貞」とは「性交経験のない男性」のことだけではなく、なにかこう、自意識にまみれて身動きがとれない人々、無邪気なコミュニケーションで周りを傷つけてしまう人々、恋愛のこととなるとたちまち向こう見ずになってしまう人々、つまり「童貞性」を持つ人々のことだろう。
ちなみに、「童貞」という言葉は本来、カトリックの“修道女”を指す言葉だった。つまり誤解を恐れず言うと、「童貞」とは処女のことだった。
「聖母マリア」は「童貞マリア」とも呼ばれたし、毎年多くの東大合格者を輩出する名門女学校「横浜雙葉学園」は、もともと「仏語童貞学校」だった。
だから女性のみなさんも、うぜえ男あるあるとして本書を楽しめるのはもちろんのこと、元童貞の1人として、過去のイタい恋愛を思い出しながら読める部分もあるのではないかと思う。
いつか童貞を卒業するあなたと、いつか童貞だったあなたへ。この本は、すべての男女に贈る恋愛の入門書だ。
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