「入れ墨」への偏見とどう向き合うか

さて、混在している2つの悩みを分けて、順番にお話しをさせていただきますね。

まず、今の彼が刺青を入れていることについて。
「反社会的な人に見える」と書かれていることからも、日常生活では隠れて見えない部分にさりげなく入っているというわけではなく、服を着ていても見えてしまうほどなのだろうと想像できます。
刺青を入れる行為自体は本人の自由ですから、誰であろうとも侵害することはできませんが、実際問題今の日本では受け入れがたいものとしている人が多いのが現状です。
今はファッションの一環としてタトゥーを入れている人も少なくなく、若い人やカルチャーに触れる機会が多い人にとっては特別注視することではないのでしょう。しかし、あなたの親世代で抵抗がある人はまだまだ多いと思われます。そのため、たとえあなたが「彼は(反社会的な人というわけではなく)好き好んで趣味で刺青を入れている」という部分から問題ないという認識を持っていても、それが親を説得する材料にはなり得ないと思います。
たとえば彼の仕事が彫師ということであれば職業柄という部分で押せるかもしれませんが、「好き好んで趣味で入れてる」と親に伝えたところで、「偏見の目がある社会で、不利益を被る可能性も考えずにその場の勢いで刺青を入れたのか?」なんて印象を抱かれかねません。

あなたにとって彼はとても優しくて素敵な人で、刺青が入っていることなんて付き合ううえで何も気にならないのかもしれませんが、その彼のいい部分は知らない人からしたら関係のないことで、どうしたって見た目で判断されやすいのです。
もちろん、見た目で人を判断するのはよくないですが、それを見ず知らずの人に強制するのは難しい。

もし彼と結婚し、刺青に偏見を持つ人たちにも彼の良さを理解してもらいたいとなると、彼だけでなくあなたも「彼はとても素敵な人なんだよ」とプレゼンする必要はあるでしょう。
パートナーの良さを周囲に理解してもらうために自らはたらきかけることは刺青の有無と関係ないでしょうが、おそらくあなたたちの場合は刺青が入っていない人たちに比べるとより頑張らなくてはいけないかもしれませんね。
となると、「彼の人となりは刺青で判断できるものじゃないから関係ない」「彼のことが大好きだから他人にどう思われたっていい」という“気にしない精神”も持っていたほうがいいのではないでしょうか。
それほどまでに、偏見を持つ人たちの偏見を取っ払うには労力や根気、時間、そしてそのための強い気持ちが求められるのです。

忘れられない元彼への気持ちを正当化しない

今の彼との結婚を考えるにあたって元彼のことが頭をよぎっているくらいですから、今のままでは将来を見据えて彼とのお付き合いを続けても、上手くいかないように思います。
「将来のことを考えたら……」と彼との今後の交際に二の足を踏んでいることからも、あなた自身もその認識があるのではないでしょうか。

「今の彼と元彼を天秤にかけるわけではない」と相談文には書かれていますが、わたしにはあなたが「刺青が入っていない元彼だったら、こんな風に悩まなくてよかったのにな」と考えているように感じました。刺青が入っている今の彼との結婚についてと、元彼が忘れられないことについて、2つの悩みが相談文に混在していることからそう捉えられます。
「周りはどんどん結婚していってうらやましい。自分も結婚したいけれど刺青が入っている彼とでは将来を考えにくい。それに引き換え元彼は……」というのがあなたの本心のように思えるのですが、いかがでしょうか。

さて、あなたは今の彼と付き合ってからも、元彼のことは一度も忘れられていないようですね。
元彼を忘れられないまま新しい彼とお付き合いするのは、決して悪いことではないと思います。
新しい彼と一緒に楽しい時間を過ごすにつれて心が徐々に解れ、元彼のことを考える時間が減っていくかもしれませんから、過去の失恋を乗り越えるいいきっかけになることもあるでしょう。

元彼と別れてどれくらい経っているのか、今の彼と付き合ってどれくらいなのかは書かれていないためわかりませんが、短期間の出来事であろうがなかろうが、今の彼への不満や不安があるからといって、元彼への気持ちを引き合いに出して正当化するのは違うのではないでしょうか。
「結婚を前提に付き合っていたからこそ元彼が忘れられない」「周りはどんどん結婚してるから焦る」「せめて今の彼と結婚してしまいたいけれど、刺青が入っているせいで結婚も簡単じゃなさそう」と、まるで「私の人生ってハードモード……」なんて自分以外の誰かのせいにしているように見えて少し心配です。

結婚への焦りがそうさせているのかもしれませんが、「なんの障害もなく結婚して幸せになってしまいたい」という気持ちが先行して(もちろん障害はないほうがいいのですが)、要所で「自分が選んで決めたんだ」という当事者意識が欠けているように感じました。
別の人(元彼)だったら生まれていなかったであろう悩みのせいでつい引き合いに出してしまっているのかもしれませんが、刺青が入っている彼と付き合うと決めたのはあなたです。
あなたが、当事者として物事を考える必要があるのではないでしょうか。