人生にイベント、本当に起きてない?
人は、節目節目の大きな出来事は語るし、書くし、写真にも残す。入学式とか、卒業式とか、就職とか、結婚とか、出産とか、旅行とか。だけど、物干し竿のキャップの部分が割れて、なかからドロドロの液体が出てきたことなんて、そのときはびっくりしてもいつしか記憶の底に沈んでしまう。
ところが『ひみつのしつもん』は、その些末な思い出たちだけで、実に豊かな世界が広がっている不思議なエッセイなのだ。そして読んでいると、本当は、卒業式の日だって結婚した日だって物干し竿のキャップ部分からドロドロの液体が出てきた日だって、人生のなかの1日であることに変わりはなく、実は等価値なんじゃないかという気がしてくる。
以前この連載で『独身の人生が「ライフイベント低発生系ゲーム」になる問題』というコラムを書いたけれど、いわゆるライフイベントは起きなくても、”イベント”自体はどんな人の人生にも、毎日起きている。物干し竿のキャップ部分からドロドロの液体が出てくることだってまた、イベントには変わりない。
2021年も引き続き、大人数で集まったり、どこか遠くへ出かけたりするのは難しい年になるのだろう。だけど家にいるだけの毎日だとしても、『ひみつのしつもん』を読むと、何もないわけがない、と思える。私がスリランカで「小学校の教室に貼ってあったポスター」とかの些末な記憶を蘇らせたいのは、たとえ些末であるように思えても、それが私の人生に起きた唯一無二のイベントであることを思い出したいからなのかもしれない。
まあそれはそれとして、頭痛と肩こりと首こりだけは早急にどうにかしたい。2021年も、どうぞよろしくお願いします。
Text/チェコ好き(和田真里奈)
初の書籍化!
チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。
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