不定愁訴に悩むときはそのモヤモヤ自体を描いた小説を

一方『ボランティア講演者』の主人公は、東南アジアに赴任中の独身男性。主人公は赴任中に、退屈を紛らわそうとヨーロッパを旅行することに決め、友人夫婦がいるドイツの町を訪れる。ところがこの友人夫婦、一見とても仲がいいのだが、会話を重ねていくうちに2人の話がだんだん食い違ってくる。夫側の話を信じるのであれば、妻は妄想に取り憑かれ精神を病んでいるし、妻側の話を信じるのであれば、夫は妻にスワッピングを持ちかける異常な性癖の持ち主だ。どうも妻のほうが真実に近いことを言っている気がするけれど、真相はわからない。わからないまま、主人公はドイツを離れる。「何か違和感があるけれど、考えすぎかもしれないし、みんな多かれ少なかれ問題は抱えているだろうし……という、30代以降の人間が抱える心の不定愁訴が、この小説を読む際に覚える奇妙さとなんだか似ているのだ。

モヤモヤを解決どころかさらに大きくする小説をわざわざ年末に勧めるなよと思わないでもないけれど、悲しいときに無理にポジティブな曲を聴く必要はないように、不定愁訴に悩むときはそのモヤモヤ自体を描いた小説を読んでみてもいいのではないかと思う。問題の在り処がはっきりしている場合はカウンセリングなどの解決法もあるけれど、そういう類のやつではない妙な頭の重さを覚えたときは、ぜひ『ワールズ・エンド(世界の果て)』を手にとってみてほしい。

大きな事故はもう起こらないかもしれないけれど、人生の悩みは尽きないし、それは今後も、ずっと続くのだから。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。

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