健全な社会と、不健全な欲望の両立
すべての人に均等に機会やチャンスが与えられ、誰も搾取されることなく、自分の希望に沿って能力を思う存分に発揮できるフェアな社会を、私ももちろん願っている。でもそういった社会において、たとえば「体を傷つけられたい」「めちゃくちゃに罵られながらセックスしたい」「複数人と乱交しまくりたい」みたいな欲望は、どこに置いたらいいのだろう。そういった欲望を「不健全だから」という理由で排除したり、見えないところに追いやったり、最初からなかったもののように扱っていいんだろうか? これは目下、私の悩みというか、引き続き考えたい課題である。
『悪女入門 ファム・ファタル恋愛論』はそういうわけで、正直、すべての女性にお勧めする本としては微妙だ。でもなんとなく、もしも私と同じ課題感を持っている人がいたら、ぜひ手にとってみてほしいなと思う。
文学の中の、ここに書くのをちょっと躊躇うような淫らな世界。別に私だって、何人もセフレを作りたいとか、SMバーに実際に行ってみたいとかではない。ただ、そういう欲望を持つ人たちを否定したくない。そして、自分の中にだって不健全な部分があることを、時代が変化しつつあるとはいえ、認めないわけにはいかないなと思うのだ。
Text/チェコ好き(和田真里奈)
初の書籍化!
チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。
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