「愛することは他者に依存すること、だから自由を失うこと」

『彼女のひたむきな12カ月』の中でアンヌは、「愛することは他者に依存すること、だから自由を失うこと」と書いている。19歳という若さでこの考えに達していることに驚くが、これは前妻アンナ・カリーナの存在に嫉妬し、夫の気持ちを疑ってしまう、そんな日々の中から紡ぎ出された言葉なのだろうと思う。

意味のない嫉妬を繰り返す自分の卑しさに落ち込み、思考の自由が奪われる。私は冒頭で「私たち凡人は……」と書いたけれど、恋だの愛だのの前では、祖父にノーベル賞作家がいようとロシア貴族だろうと、すべての人が等しく凡人だ。『彼女のひたむきな12カ月』を読むと、そのことが身に沁みる。

『女は女である』『グッバイ、ゴダール!』もAmazonプライムに入っているので、ぜひアンナのかわいさとアンヌの苦悩を両方観てみてほしい。本を読んで映画を観たら、恋人の元カノのSNSをチェックしてしまう自分の醜さを、少しだけ許せるようになるかもしれない。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。