東大院卒の元日経新聞記者で元AV女優という異色の経歴が、週刊誌でセンセーショナルに取り上げられた文筆家の鈴木涼美さん。女性の抱える多面的な欲望や生き様を、疾走する文体で綴った著書『身体を売ったらサヨウナラ』も注目を集めています。
そんな彼女に、女性の枷ともなっている“結婚”という制度との向き合い方、結婚しない“おひとりさま”の生き方について、全4回にわたって伺いました。
後先の幸福のために、今の幸福を捨てたくない
宮本晶比古
――前回は、老後のことを考えて結婚しようという気にはなれない、という鈴木さんの本音が印象的でした。
- 鈴木
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私たちって、中高生のときにガンガン日焼けしていた世代で、20年後のお肌のことなんて考えずに、そのときの楽しさのほうを選び取ってきたところがあって。
そのスタンスを今もあまり変えたくないというか、後先の幸福を考えて今の幸福を犠牲にするという思想がないんですよ。だから私は、目の前の人が欲しくて欲しくてしょうがなくて、相手も結婚したがっていたら結婚すると思うけど、20年後に孤独でいたくないからという理由で、結婚を選び取るという考え方にはなれない。今はそういう子が多いんじゃないですかね。
――女性はまじめだから、「仕事に生きることを選んだのは自分なんだから、結婚しない/できないのは自分が悪い」というふうに、自己責任や罪悪感を感じてしまう人が多い印象があります。
- 鈴木
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今の幸福を優先することに罪悪感を抱く必要はないと思う。後先のことを考えて慎重に進路を選ぶほうが崇高なことに思われがちだけど、そこは並列だと私は思ってるんで。
後先のことばっかり考えて、リスクヘッジするのが好きな人っているじゃないですか。どっちが好きかという違いだけなんじゃないかな。