“結婚しない生き方”のロールモデルはまだ少ない

結婚しない生き方についてインタビューに答える鈴木涼美さん 宮本晶比古

――年を重ねるにつれて、結婚しないことに理由を求められるのがうっとうしい、という女性は多い気がします。

鈴木

30歳を過ぎると、“結婚していない”ということ自体がひとつのアイデンティティになっちゃって、独身でいることにいちいち理由やスタンス、ポジションが求められてしまうんですよね。
たとえば作家でも、負け犬キャラとして自虐するか、逆にそれを誇りにしていますと振る舞ってみせるしかなくなる。

 ただ向いてないから結婚しないとか、ただなんとなく結婚していないという人が、不自由や居心地の悪さを感じずに、自然に振る舞えるような気分はあったほうがいいと思う。

――20代女性に話を聞くと、周りにいる40代の独身女性は、なんだかギスギスしていたり、個性の強すぎる人が多くて、「正直ああなりたくないな」と思ってしまう人もいるみたいです。

鈴木

“結婚しない生き方”のロールモデルが、まだ少ないせいもあるでしょうね。
私たちの世代でさえ、30歳になったら結婚しろという圧力がまだ衰えていないのに、今40〜50代の独身女性は、“結婚するのが普通”という相当強い価値観をはねのけてきたわけですから、偏屈で個性的な人しか生き残れなかったというのはあるかも(笑)。

 それに、少数派だからこそ目立ってしまうというのもある。著名人でも、地味で平穏に生きている独身女性だっているはずなのに、荒々しくエキセントリックに生きている人のほうが、メディアに出るから目に付くんですよ。
「この人みたいな生き方だったらしたいな」という憧れのロールモデルになる場合もあれば、「ああなるくらいだったら普通に結婚して子ども生みたいな」と思わせてしまう反面教師になる場合もあるでしょう。