ボロは着てても心は錦と言いまして。

贅沢な家で暮らせなくなってしまった

世界は一人の女を受け止められる

前に住んでいた家には、24時間管理人さんが常駐していて、クリーニングやケータリング、宅急便の手配なんかを請け負ってくれていた。ゆとりある内装に、洗濯機やガス乾燥機など必要な家電もあらかた備え付き。なかなか贅沢な家だった。ところが色々あって、沢山あると思っていた我が家のお金がいつの間にやらなくなっていて、とき同じくして夫婦関係にも終わりが見え始めたので、嫌が応にも生活を大きく変える必要が出てきたのだ。

途方にくれる私を見て、多くの友人たちは「もう地元に帰りなよ」とアドバイスしてくれた。一度上げてしまった生活水準はなかなか落とせないし、東京に住むことにこだわって家賃で首が絞まるより、家賃も物価も低い福岡の地元に帰った方がいいんじゃない?というのが、彼らの好意からの意見だった。

そうは言っても、子供たちの学校はなるべく変えたくないし、私は東京が好きだし、地元には帰りたくないなあと思っていた。で、何か良い手はないかと考えていたあるとき、ふと近所に面白い物件を見つけた。

築40年以上経っている古いマンションの一室。広さは、それまでの家の3分の1程度になるけれど、働き出した頃から、広い家の掃除をして、綺麗な状態を維持する余裕がなくなってきていたし、ちょうど良いように思えた。狭い分、家賃もすごく安くなるし、何よりその部屋、壁を抜こうが色を塗ろうが、好きなように改装して良いことになっていて、退去時の原状回復の義務もない、DIY推奨物件だったのだ。