自分のセクシュアリティに向き合ってこなかった私たち

もちろん、いくら学問上は「そういうもんだからしょうがない」としても、人の心を傷つける行為は可能な限り避けるべきではある。不倫・浮気自体は避けようがないとして、パートナーを傷付けることにまったく罪悪感がないとか、浮気相手の女性を尊重する気がまったくないとかだと、やっぱり人としてどうかと私は思う。

加えて、最近にわかに囁かれはじめた「ライフ(結婚)パートナーとセックス(恋愛)パートナーが同じなの、無理があるのでは?」という議論が、本書には何度も登場する。

でももちろん、「家庭の外に恋人を作る」ことを誰もが承認できるわけではないだろう。パートナーが自分以外の相手とセックスするのはどうしても嫌だという人もいる。また、自分以外の相手とのセックスそれ自体はOKだとしても、相手が複数だったら嫌だとか、逆に1人に気持ちが集中してるほうが嫌だとか、そのあたりはまさに「100人いたら100通り」なんじゃないだろうか。

私をはじめ、性的マジョリティである「ノンケ」は、自分のセクシュアリティと真剣に向き合うことを長らく避けてきた。というか、避けてこれてしまった。でもこれからは、「ポリアモリー的な感性を受け入れられるか」「パートナーが自分以外の相手とセックスすることを許容できるか」「できないとして、パートナーが自分とのセックスに満足できない場合はどうするか」など、向き合わなければならない問題がたくさんあることに徐々に気付いていくのではないだろうか。

ハードな時代ではあるけれど、一部の人に考える負担を押し付けるより、みんなで悩んで考えている社会のほうが私は好きだ。

とりあえず、『人はなぜ不倫をするのか』はどんな立場の人にも、ぜひ読んでみてほしい本である。