被害者になることも、加害者になることも

Aはもともと鬱病で、病院から処方された薬を飲んでいる身でもあった。もしかするとその不安定な精神状態に内澤さんから出た別れ話のショックが重なり、一気にストーカーと化してしまったのかもしれない。
私だって精神的に不安定な時期は1年全体を通して見たらそりゃあるし、そういう時期に人間関係上の悪いニュースが重なれば、特定の相手に対して異常な執着心を燃やしてしまうこともあるかもしれない。

また、内澤さんがAのカウンセリングを依頼したNPO法人「ヒューマニティ」理事長の小早川明子さんによると、ストーカー事件において悪いのはまず間違いなく加害者であるとした上で、被害者にもいくつかの特徴や共通点があるという。いわく、母性的であり、同情や共感をしやすく、責任感が強い、いわゆる”いい人”で、その裏に自己評価の低さが隠れているタイプなのだとか。自分の内面的に心当たりがあるのはどちらかというと加害者のほうなのだけど、この「被害者の特徴」は思い当たってどきっとする人も多いのではないだろうか。

加害者になるトリガーも被害者になるトリガーも、日常のどこに潜んでいるかはわからない。『ストーカーとの700日戦争』はその恐ろしさと、法整備が現状にまだまだ追いついていない今の日本の状況についても勉強になる部分が多かった。
読み物として間違いなく面白いのだけど、いつかの日の備えとして、頭の片隅にこの本にある知識を入れておくのもいいかもしれない。