しょっぱなから少々ネタバレをしてしまうのだけど、渡辺ペコさんの漫画『1122』には、夫とのセックスレスに悩む主人公の女性が、女性向けの性風俗を利用するエピソードが登場する。30代半ばにさしかかり性欲もほとんど消えかけていた主人公だけど、性風俗で若い男の子との情事を経験し、もう一度自分の性を見つめ直す機会を得るのである。
さらに、主人公は後日、男友達に性風俗を体験したことを報告する。そのとき、「思い出すとあったかい気持ちに――」と主人公は若い男の子との情事を語るのだけど、男友達にすぐ「ああ、いやらしい気持ちね」と言い直されるのだ。
このシーンを読んで、私は「たしかに……!」と膝を打ってしまった。恋愛しているときに感じるあの「あったかい気持ち」は、よーく分解してみると、しばしば性欲と同じだったりする。お付き合いの期間を重ねれば性欲はだんだんその人自体に向けられた「愛」に変わっていくこともあるけれど、なんだかんだで恋愛の「アレ」は、性欲なんだよな……と私は冷静に納得してしまったのであった。
更年期をむかえると、恋愛感情は消える?
しかし、恋愛感情の大部分が性欲に基づくものならば、年齢とともにその衝動も落ち着くはずである。前回【弱さはむしろ寛容に繋がる。目指すは「完全ではない大人」】も紹介した小泉今日子さんと様々なゲストの方が「50歳の節目」について対談している『小泉放談』を読むと、著述家の湯山玲子さんが、こんなことを言っている。
湯山:ただこれ、微妙な話題かもしれないけど、更年期以降、性欲はなくなりますよ。「何だったんだ、今まではー!」っていうくらいに。
小泉:アハハ! 言った!
湯山:つくづく、恋愛は性欲だったんだ、というのがね……。何というか、キュンとくるというか、ジュンとくるというか、そういう下からの突き上げがないから、もう全部、友情だもん。
湯山さんいわく、更年期をむかえると、少しずつ性欲も……つまり恋愛への欲も落ち着くらしい。あとに残るのは、小学生の頃に男女で一緒に缶蹴りをしていたような、純粋な友情だという。
20代〜30代が多いAMの読者(&私)にとっては、つまりあと25年前後の辛抱だ。跡形もなく消えるわけでは決してないだろうが、恋愛的なものの存在が薄くなることを、寂しいと感じるか「やっと解放された……」と思うか、あなたはどちらだろうか。私は後者だ。
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