弱さは他者への想像力の源泉になる

もう1つ、『小泉放談』で個人的に面白かったのは、小泉今日子さんと上野千鶴子さんとの対談である。
上野さんは対話の中で、「歳をとって、自分が弱い生き物だってことがわかってくると、『あ、人間って壊れものだったんだ』と、しみじみ思うようになりまして」と語る。

自分が弱くなると他者への想像力が働くようになるというのは、すごくシンプルな話だ。たとえば、視覚障害者の日常が体験できるワークショップなんかに参加すれば、世の中が視覚障害者にとってどれだけ不便で冷たい世界か気付くことができるだろう。
それと同じ話で、自分が衰えて心身の自由が利かなくなってくれば、他者の抱える弱さに敏感になることができる。世界に対して、今よりも少しだけ寛容になることができる。そう捉えられれば、歳をとることも、失敗することも、弱くなることも、あまり怖くはない。

「はっきり言って、老いは美しくないです。無様だし。誰もカッコよく、コロッとなんか死ねない」と、続けて上野さんは語る。

おそらく20代~30代が多いAMの読者(&私)にとっては、『小泉放談』で語られる「50歳」はまだまだ先の話だ。だけど、結婚とか出産とか仕事とかの個人的な枠をこえて、自分の心身や価値観がどう変わっていくのかを予習しておくことは、そう無駄でもないかなと思う。
まあ、ここで語られているような「自分の弱さを許すことで他者に対して寛容になる」みたいなことって、どちらかというと我々女性よりも男性に頑張ってもらいたいパートであるような気はするんだけど……。

綺麗じゃなくちゃいけない、有能じゃなくちゃいけない、仕事ができなくちゃいけない、恋愛で二度と失敗しちゃいけない。そういう数々の呪縛は、まだまだたくさんある。私もたいがい見栄っ張りなので、まだまだ「綻び」を上手いこと他人に見せるなんてわけにはいかず、意気がって突っ張っている。だけどこれから歳をとりながら、徐々に、「完全ではない私」を、きちんとまわりに見せていけたらいいなと思う。

それができるようになったら、たぶん私たちはまた一つ、大人になれるんじゃないだろうか。

Text/チェコ好き

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