まだ知らぬ純喫茶を目指して!
2019年も残すところ数日となりました。本日が仕事納めという方も多いのではないでしょうか? 通年より少し長めの冬休み(業種によりこれからがお忙しいという方もいらっしゃると思います。その皆さまは繁忙期が落ち着いた頃にゆっくりお休みできますように)、遠くへお出掛けされる方も、ご近所で過ごされる方も、ひと息つきたい時にはぜひ純喫茶へ。
私は2019年もたくさんの純喫茶へ足を運び、26日現在280軒(同じ店舗への重複訪問含む)にお邪魔してその空間やメニューを楽しませていただきました。そんな中、今年最も集中的に足を運んだのは京都。今までも数えきれないほど何度も訪れていて、ある程度の純喫茶は知っているつもりでいたのですが、それはおこがましく、まだまだ知らない素晴らしいお店がたくさんあり、慢心することなく日々散策していきたいと改めて実感しました。今回は、京都の北山で出会ったお店について綴ります。
赤い林檎がモチーフのかわいらしい純喫茶「ひめりんご」
来年発売する新刊取材のため、9月から毎月足を運ぶこと4回目。12月下旬の京都へ向かう新幹線の窓から見えた風景は、うっとりするような白冠の富士山をはじめとした冬の景色でした。京都駅に到着してからバスで目指したのは、神光院前停留所。初めて降り立つ街は歩いているだけで目に映るものすべてが新鮮でわくわくします。川を目指して進むこと数分。車道沿いに見えてきた林檎の成る木を模した看板、純喫茶「ひめりんご」があらわれます。その可愛らしさにまず目を奪われ、さらに外観を見渡すといたるところに赤い林檎のモチーフや、なんと実際に林檎も実る鉢植えも。
扉を開けるときには取っ手の上にもご注目。
年にひと月だけ楽しめるというクリスマス仕様の店内は華やかで、白いレースに彩られた窓からは穏やかな冬の景色が見渡せるので人気だそう。
こちらを営むご夫妻とお会いするのは初めてでしたが、その物腰やわらかな雰囲気にすっかり緊張もとけてリラックスして過ごすことができたのです。
取材を進める間にもひっきりなしにやってくる常連さんたち。
「あら、いらっしゃい」「寒くなってきたね」
ちょっとしたやり取りにあたたかさを感じる微笑ましい光景。しばらくしてやってきた一人の女性はいつもの席に腰を下ろし、私たちが取材する様子をにこにこと微笑ましく見守って下さり、「ここのフルーツサンドがとっても好きでね」と教えて下さいました。
初めて訪れる私たちと違って、常連さんはそのお店のエキスパート。一番美味しいメニューを聞くにはうってつけです。ありがたくいただいいた情報通り「フルーツサンド」を注文してみると、今までの概念を打ち破る黒いパンに包まれた果物たちが!
私は初めて知ったのですが、「黒パン」といって京都ではたまに販売しているパンだそう。ふわふわとしたパンを噛み締める度にどことなく黒糖のような甘みが香ってくるようでとても美味しいのです。メニューを一通り見ていても想像と違ったものが飛び出すのが純喫茶の面白いところの一つであるなあ、としみじみ。
その美味しいサンドを作って下さった奥様が「私は雪が積もる2月くらいの窓からの眺めが一番好き」と教えて下さったので、京都周辺にお住まいの皆さま、また旅で近くに行かれる皆さま、「ひめりんご」のあたたかい店内から行かれる時期によって表情を変える四季を味わってみませんか?
2019年も純喫茶にまつわるつぶやきにお付き合い下さり、本当にありがとうございました! 良い年越しをお過ごしくださいませ! そして、2020年も純喫茶が傍らにある穏やかな日々が過ごせますように。
Text/難波里奈
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