柿が苦手、という人の概念さえも覆す
秋を飛び越えて一気に冬の寒さを感じる季節となりましたが、お元気に過ごしていらっしゃいますか? 風邪をひきやすい季節だからこそ、免疫力を高めるビタミンCを多く含んだ果物を食べたくなります。とはいえ、自宅では多くの種類を食べるのも、ちょうど良く熟したものを見分けるのも難しいこと。そんな時に寄りたいのはフルーツパーラー。プロの視点で厳選された旬の果物をいただけます。
冬の果物といえば、イチゴ、リンゴ、みかん、ゆず、柿など。幼い頃は得意でなかった「柿」は、大人になって好きになったものの一つです。一口に「柿」といっても、富有、次郎、太秋などを筆頭にその品種は1000種類もあるのだそう。その中の一つ、「百匁柿(ひゃくめかき)」を知ったのは、浅草にある「フルーツパーラーゴトー」がきっかけでした。
ゴトーの店主、後藤さんとは私の書籍『純喫茶、あの味』の取材をきっかけに親しくさせていただいていて、数か月に一度、共通の友人を含む3人でパフェを食べてから夕食を共にする、という会を開いています。そのご縁がなかったら通り過ぎてしまったかもしれない百匁柿の食べ頃を知ったのは、友人からの誘いによるものでした。「近々浅草でごはんでも。そろそろはじまる百匁柿のパフェを食べに行かないと」と、販売時期を今か今かと待つようなそんなに美味しい柿ならば食べてみたい、と久しぶりにお店を訪問したのです。明るい店内への扉を開けると、ひらひら手を振っていつも素敵な笑顔で迎えて下さる後藤さんご家族が。
さっそく、お目当てのパフェを注文して、運ばれてくるまでの間に後藤さんのお母様としばし雑談するのも楽しい時間。この日聞いたところによると、柿には渋柿と甘柿があるそうで、渋柿である百匁柿は渋抜き処理が必要なんだそう。それは、段ボールに入った数百個の柿一つ一つにアルコールを吸わせ、毎日熟していく様子を丁寧に観察し、その具合によって個々の場所を移動させる、という気の遠くなるような手間のかかる作業。「誰にだってできるわよ」とお母様は笑いますが、もちろんそんなはずはなく、長年培ってきた果物への知識と技術、そして愛情によって成せることなのです。
干し柿にしなくとも、生のままねっとりとした果肉としたたるほどの果汁、今までの柿への概念を覆すような甘さを味わえることに毎年感激する人が多いため、数百個の柿もあっという間になくなってしまうそう(お会いした時には『11月いっぱいくらいまではあるかな?』とおっしゃっていましたが、人気メニューのため完売していたらまた来年ぜひ)。
自分で剥いて食べる果物ももちろん美味しいですが、誰かが自分のために作って下さるという喜びは美味しさを倍増させることでしょう。純喫茶、という場所はそういうほっとする時間を提供して下さっていると思って感謝しています。
ゴトーには1年中瑞々しく美味しい果物が並んでいます。浅草散策の途中に寄り道して、美味しいパフェを食べて帰りませんか? ペリカンのパンを使用したトーストやホットケーキ、季節のジュースもおすすめです。
Text/難波里奈
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