いきなり変な話から始めますが、みなさんは「トペス(TOPES、TOPE)」って聞いたことありますか? これは、メキシコをはじめとする中南米の国々の道路にある、「人工の隆起物」のことを指すのだそうです。
なぜ道路にそんなおかしな隆起物があるのかというと、ラテン系の方々って車を運転するときにあまり制限速度を守らないらしいんですね。そこで、道路にわざわざ隆起物を作って、標識などで「この先にトペスあり」みたいな警告をする。それを見たら、速度をゆるめないと、トペスのせいで車体がものすごい衝撃を受けてしまいます。だから、ラテン系の方々もトペスの標識が目に入ったら、仕方なく車の速度を落とすのだとか。
このトペスという隆起物、中南米の国々の道路には、本当にたくさんあるんだそうですよ。
UFO村、カピージャ・デル・モンテ
さて、ラテンアメリカを代表する小説といえば、コロンビアの作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスの『百年の孤独』がありますよね。祖父と父と息子と3代にわたって同じような名前の登場人物が出てきたり、超現実的なことが次々に起こるので、少々読みにくい小説としても知られています。
かくいう私も、実は大学生の頃から幾度となく挫折を繰り返してきていたのですが、新しい名前が登場するたびに家系図を見て本に線を引く、という地道な作業を行なったら、このたびなんとか通読することに成功しました。いやー面白かった! 近年稀に見る達成感です。
この『百年の孤独』でいちばん有名なシーンといえば、小町娘のレメディオスが、庭先でシーツに包まれながら空へと舞い上がり、そして消えてしまうところでしょうか。しかし、東洋の国に住む我々からするととても幻想的に思えるこのシーンも、ラテンアメリカの世界では普通にあること、つまり「現実」である──我々の考えている「幻想」と「現実」は、別世界へ行くとしばしばその枠組みを失ってしまう。そんなことを、イギリスの批評家は「マジック・リアリズム」と呼んだりもしました。
いまいちピンと来ないという方がいるかもしれないので、もう少し補足しましょう。あのですね、アルゼンチンの中部に、「カピージャ・デル・モンテ」っていう村があるらしいのです。「カピージャ・デル・モンテ」、通称UFO村。村の東にそびえるウリトルコという山の頂上付近にしばしば謎の発光物体が現れることで知られ、村の人のほとんどがUFOの目撃者であるといいます。
私たちがまわりに「UFOを見た!」なんていおうものなら年不相応の不思議ちゃんと見なされ避けられるのが関の山ですが、この村では、タクシーの運転手さんも、レストランのおばちゃんも、子供たちも、みーんな普通にUFOを見ているらしいのです。このUFO村の話を聞いたとき、私は「これぞラテンアメリカ、マジック・リアリズム!」と心が躍りました。みなさんも、UFO見たくないですか?
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