少し前、Xで「結婚するメリット」について、「同じ家の中に自分とは異なる価値観の人間がいること」であると語っている人がいた。
もちろん、言わんとすることはわかる。一人暮らしだとなんでも自分の好きなように決められてしまうので、それによって価値観が偏っていったり歪んでいったりすることがあるかもしれないが、同居人がいるとそれを防ぐことができる……という感覚は、一人暮らし歴10年の私にもなんとなく理解できる。
しかし、重箱の隅をツンツンつつくような感じになってしまって非常に申し訳ないのだが、厳密に言うとそれは「同じ家で親兄弟以外の他人と暮らすメリット」であって、「結婚するメリット」ではないのでは? とも思ってしまったのだった。
このように、「結婚するメリット」について語ってくれる人はけっこういるのだが、重箱ツンツンマインドが一度発動してしまった私からすると「それって厳密には『結婚』のメリットではないですよね?」と言いたくなってしまうものばかりで、これまで唯一「それは確かにそうだ」と思えたものは、「住宅ローンの与信が増える」だけであった。
ただ一方で、同性婚が認められていない現代の日本では「30代半ば以降のいい大人が親兄弟以外の他人と暮らす」方法が異性との結婚のみにほぼ限られているのも事実であり、件の人が「結婚するメリット」として「赤の他人と暮らすメリット」を語ったことも、(重箱ツンツンマインドが発動しなければ)それほどおかしな感覚ではない。
でも、こんなご時世だし、「30代半ば以降のいい大人が親兄弟以外の他人と暮らす」方法が異性との結婚以外にもたくさんあったほうがいいんじゃないかなー、と独身の私は純粋に思うのだった。
そんな中で最近読んだのが、藤谷千明さんの『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』だ。本書はタイトルのとおり、アニメやソシャゲや観劇などにハマっているアラフォーの未婚オタク女性4人が、一軒家で同居を開始するエッセイである。
物件探しの壁、保証人の壁
4人の女性の同居のきっかけは、著者の藤谷さんが同棲していたパートナーと別れて一人暮らしとなり、生活コストの高さに気づいたこと。そんなとき、Twitterで漠然とした将来の不安を吐露していた友人を発見し、「ねえねえ、オタクルームシェアしない?」と話しかけたところから、計画はスタートする。
しかし、メンバー集めまではうまくいったものの、その後の部屋探しで難航してしまう。同性同士のカップルが物件探しで苦労する話は聞いたことがあるけれど、友人4人のルームシェアが可能な物件を探すとなると、その上をいく難しさだ。ルームシェア可の物件はペット可の物件よりも少ないらしく、4人の職場との近さや生活スタイルなどを考慮し始めると、契約可能な物件を探し当てるのは奇跡的な確率であるとも言える。
その後、紆余曲折ありつつも、なんとか4人でルームシェア可できる物件を発見。しかし、立ちはだかる保証人の壁! 藤谷さんの妹を保証人に立てたところ審査を通過できたとのことだが、少子化で一人っ子も増えている今の世の中で、このシステムはそう遠くない未来に破綻してしまうのでは? と思う。
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