「恋愛しない若者」を嘆くフェーズはもう終わった。2050年の世界はどうなっている?

SNSでたま〜に見かけて傷つく投稿の1つに、「子供のいない人は次世代のことを考えていないので、自分たちが逃げ切れればオッケーだと思っている!」みたいなのがある。まあ、Xのおすすめ欄なんて魔境を出来心でつい覗いてしまう私が悪いのだが、しかしそれはそれとして、この手の投稿には毎回ちょっと落ち込むのである。

まず、私個人の感覚でこれについて反論すると、私は「自分が逃げ切れればオッケー」とはあまり考えていない……と思う。どこまで何をやれば「次世代のことも考えてる」ということになるのか曖昧なので感覚で反論してもあまり意味ないが、戦争のこととか経済のこととかけっこう考えてるし、選挙に行って、託児所を運営する団体とかに寄付もしてるけどなあ、それだけじゃアカンのかい?という気分になる。

次に、私個人の感覚ではない反論をすると、我々の親たちはそんなに次世代のことをちゃんと考えていただろうか……? と疑問がわく。うちの両親を思い出すに、父も母もどちらかというと善人の部類に入る人たちだとは思うが、「子供たちの世代のためにやれることはやるぞ!」という感じではなかったなー、と素直な感想を持ってしまう。私のことは可愛がってくれたけど、それはただ自分たちの子供だからであり、「次世代のため」ではなかったというか。
何より、多くの政治家や大企業の経営者は既婚者で子供もいると思うが、彼らは本当に「次世代のこと」を考えているだろうか。「自分(とその家族)が逃げ切れればオッケー」思考の人はどこにでもいるし、子供がいる・いないはあんまり関係ない気がする。よしながふみの『大奥』の中でも、平気で孫を毒殺する母親(治済)もいれば、次世代のためにワクチンを開発する独身・子なし(平賀源内、青沼)もいたはずだ。

というわけで、今回はちょっと未来の話をしたい。経済コメンテーターであるヘイミシュ・マクレイの『2050年の世界 見えない未来の考え方』は、タイトルのとおり、今から約30年後の2050年の世界がどうなっているかという未来予測本だ。

日本の少子化が2050年までに回復することはない

本書は未来に変化をもたらす5つの力として、人口動態、環境と資源、貿易と金融、テクノロジー、そして政府と統治を上げている。すべて興味深いけれど、ここではまず「人口動態」の章を見てみたい。

少子化やそれに付随する婚姻数の減少、さらに若者の交際経験の少なさなどが取り沙汰される昨今、本書の予測によると、残念ながら日本の出生数はこのまま回復せず、世界でも有数の高齢社会になることはもはや必至のようだ。いろいろな要素が複雑に絡み合うので未来予測って困難だけど、それでも人口動態についてはあまり外さないとヘイミシュ・マクレイは語る。なぜかというと、「今いる人口」は確定しているからである。適齢期のすべての男女が結婚し2人以上の子供を作っても、「適齢期のすべての男女」の数自体が今後どんどん減っていくので、日本の人口が2050年までに回復することはない。そして、少子化の話になると何かと登場する諸外国も同じような状況で、フランスも、北欧も、日本ほどではないにしろ少子高齢化への道を間違いなく歩んでいるという。