クラスメイトの家でエロビデオを見る作戦

こうして我々クラスメイトはエロを通じて連帯を深めるのだが、ある日、T君が父親のエロビデオを持ち出すことに成功した。放課後皆で見ることになったのだが、T君の家には姉と弟がいる。そこで、選んだのが、一人っ子のK君の家だ。団地に住んでいるのだが、小学生がゾロゾロと家に入っていったら近所の人からエロビデオを見ているのでは、と怪しまれることを危惧し、我々は「外で楽しく遊ぶ元気な小学生」を装うことにした。他の家の人がK君の両親に対して「K君、お友達10人ぐらいで団地の庭を走り回ってましたよ」と言わせようとしたのである。

その前週、我々は日生劇場で『ガンバの大冒険』というミュージカルを校外学習で見に行ったのだが、このときに演者が歌っていた歌を全員で喚きながら約80メートルはあろうかという団地の芝生を走り続けたのだ。この隠蔽工作が終了したら無事K君の部屋へ。念のためドアにはチェーンをつけ、我々はエロビデオを暗い部屋で見始めた。いきなり全裸の女が出てきて、床に置いた天狗の面の鼻にアソコをかぶせ、上下運動をする。全員がゴクリと唾をのみ込む音が聞こえた。

その後、絡みあり、エロアニメあり、の約1時間、我々は誰もオナニーをすることなくエロビデオを見続けた。K君の隠蔽工作は親にバレなかった。しかし、この日、T君の父親は家に早く帰ってきてしまったためエロビデオがないことに気づかれ、T君は大目玉をくらったのである。そのときは「ビデオテープを見たことがない友達がその形を見たいと言った」と嘘をついた。当然父親がそんな詭弁を信じるワケはない。

というわけで、男というものはエロのためには万里をも走り、恥も外聞も捨て、さらには隠蔽工作をするのである。そこの基本線はまさに「三つ子の魂百まで」だ。

T君はその後、「オレは居酒屋の店長になる」という野望を抱き、見事その野望を達成。そして僕たちは彼の店に行き、このときのエピソードを語り合うようになったのである。当然勃起はしていない。

Text/中川淳一郎