自分が女であることの自覚
それから誰もいない待合室でぼーっとしていると、尿検査用のカップを持っている看護師さんに小声で「妊娠の可能性はないですよね?」「ピルを2日以上飲み忘れたりもないですよね?」「妊娠検査は省きますけど、よいですか?」と強めに確認され、ここで改めて妊娠そのものに対する怖さみたいなものを自覚する。
そもそもピルの飲み忘れもないので妊娠はないはずだし、現段階での私は妊娠を望んでいない。仮に妊娠していたら今この場ではっきりとわかるわけで、出産/堕胎どちらを選ぶにしても私の身体と人生は大きく変わる。妊娠した時点で自分だけでは制御できない部分がきっと今よりも大きくなるだろうな。私が私ではなくなる気がして、一瞬で恐怖と焦りを覚える。きっと私は子どもを愛せないんだろうな。ふと、母親のことを思い出しながらそんなことを考える。
番号札に書かれた番号が呼ばれて診察室に入ると、30代後半くらいの男性の先生が待っていた。現在の状況説明後、がん検診・エコー検診を受けることに。あの検診台には絶対乗りたくなかったのだが、「そうなるとできることないですよ」と言われ、しぶしぶ承諾。ですよね……えーほんとに?絶対嫌なんですけど。でも仕方ない……。
以前、診察を受けた婦人科は女性の先生がとにかく機械的・短時間で診察を行っていくだけだったのだが、今回は看護師さんもこれから何をするのかをマメに説明してくれ、屈辱感や不快感も少ない。痛みもほとんどなかったからか、前回よりは多少なりとも克服できたのかもしれない。だけどやっぱり思った以上に股を広げなければいけないし、無防備な体勢への羞恥心も凄まじい。検査中、自分が情けなくて、いつも少しだけ泣いてしまう。
検査が終わって、エコー写真を見せてもらう。2センチほどの小さな筋腫はあるものの、何も問題ないことが伝えられ、一安心。先生も、無知ゆえの私の質問にも親身に答えてくれ、そういう意味でも安心ができた。女として値踏みされていないというか、馬鹿にされていないというか。婦人科に通っていて一番しんどいのって自分が女であることをより強く自覚しなければならない点なので。