「いい経験」ってつまり何なのか

しかしここで問題になるのは、「その後の人生に残るような、長く恩恵を享受できるような経験って何?」ということではないだろうか。著者は45歳の誕生日に、カリブ海に浮かぶセント・バーツ島に家族や友人を大勢招待し、盛大なパーティーを開催したのがとてもよかったと語る。著者が満足しているならそれ自体はいいが、内気な私は、自分の誕生日にそんなにたくさんの人に囲まれたくないぞ!

「素敵な思い出になるような経験」は、ある人にとってはセント・バーツ島で盛大なパーティーを催すことかもしれないし、ある人にとってはたった1人で行く海外旅行かもしれないし、またある人にとってはホストクラブでシャンパンコールをやることかもしれない。ただ、「あれを経験しておいてよかったなあ」と思えるか否かって究極的な話、事後にしかわからないのでは。私だって、「これは後の人生で必ず恩恵を享受できるぞ!」と思って23歳のときに50万円使えたわけではない。「いい経験」ってつまり何なのか。本書には、それについてはあまり詳しく書かれていなかった。

とはいえ、『DIE WITH ZERO』を読むと、お金を使うことに前向きになれる。私もそろそろ海外旅行を解禁するつもりだが、36歳になった今も、旅行に使うお金はまったく惜しくない。行く先で、思う存分お金を使ってこようと思う(その割には安宿だけど……)。

Text/チェコ好き(和田真里奈)