私が幸せでいるために、家族とは遠すぎるままがいい

結婚式の直前まで憂鬱だった原因は妹の存在だった。妹とはもう15年以上会話をしていない。何もかもが私とは正反対で、合わない。新郎(弟)側の参加者は母・妹・私の3人で、新婦側の家族はもちろん私たちが不仲なことなんて知らない。披露宴で確実に気まずい雰囲気なる予感しかせず、どうしても参加したくはなかった。

久しぶりに会った妹は、身に着けているものやスマホに貼ったステッカー、話し方において「あ、私この人嫌いだ」と思ってしまった。実際は気まずい雰囲気になることもなく、会話もなんとなくしてみたりはしたが、どうしても好きになれない。

本当に久しぶりに会った私たち家族は、どこにでもいる普通の仲のよさそうな家族に見えたと思う。だからこそ、私はこの人たちの中で生きていくのがしんどい。過去が何もなかったことにされそうだし、幸せになるためのハードルとして消化されてしまうような気がするから。他人からは普通に見えてしまうことすら、許せない気持ちが心のどこかにある。

少し気を抜いて口論になった時、何かを言い返せばまた激高され、まったくコミュニケーションを取ろうとしない母親。もしかしたらわかってくれるかもしれないという少しの希望が打ち砕かれ、そして失望する。同じことを何度も何度も繰り返している。時間が経てば人の考えは変わる、だなんて嘘で、母からすれば私はずっと子どもであって、絶対に非を認めない姿勢はそう簡単に変わらないのだと思う。

私は家族が嫌いだ。どうしたら好きになれるのだろうとずっと考えていた。家族に対する明るい気持ちどころか関心すらない自分に対してコンプレックスを抱いていた。なんで、家族を好きになれないんだろう。どうして許すことができないんだろう。もう大人なのに。過去の出来事として消化できない私は精神的にとても幼いのではないだろうか。ずっとそんな風に考えていた。

でも、やっぱり好きになれない。私が幸せでいるために、自分らしく過ごしていくために、家族との距離は今の遠すぎるままがいい。相変わらず家族の誰とも連絡を取らないし、妹は連絡先すら知らない。でも私にはこのままが一番いい。そうに決まっている。弟に対する祝福の気持ちの裏側で、罪悪感を抱きながらそんなことをひとりで考えていた。

Text/あたそ