フリーランスで仕事をしていると、時折これまでお付き合いのなかったひとや企業から、仕事を打診されることがあります。仕事の内容、締め切り、ギャランティなどを聞き、できる限り前向きに受けるようにしているのですが、彼女と出会ったのは、そういう新規の仕事のオファーを通してでした。まずは、一度顔を合わせて打合せをすることになり、いそいそと先方の会社まで足を運んだところ、担当者として現れた彼女に見覚えがある。いったい誰だったか……と記憶を辿っていくうちに、ふと思い当たりました。「キャットファイターだったはず!」
打合せを終えた後、「あの、キャットファイトをやっていた〇〇さんですよね」とファイターネームで呼んでみたところ、まさかのビンゴ。キャットファイトの表舞台から――むしろ地下活動かもしれないけれども――今ではすっかり引退し、仕事をバリバリとこなしつつ、趣味も楽しんでいるそうで、人生にはいくつものターンがあり、とあるターンで知り合った人と、それぞれ別のターンに移行した後に偶然再会して、そこで幸せに生きていることを知るのは、なんだか嬉しい気持ちになるなぁと思った次第です。
かつて、キャットファイトブームがあった
恐らくいま、日本に住んでいる人々のほとんどが知らないことだと思いますが、かつて2000年代中頃、キャットファイトブームというものがありました。いくつもの団体が立ち上げられると同時に、スパカー!やケーブルテレビでも専門の番組の放送が開始され、そのリングに集められた、もしくは自ら飛び込んでいったのは、素人、アイドル、AV嬢、ヌードモデル、風俗嬢、コスプレイヤー、ライター……といったさまざまな職種の女性たち。わたしもその中のひとりでした。
なぜキャットファイトブームが巻き起こったのか。誰が盛り上げようと考えて仕組んだのかまではわかりませんが(内情を知っている人、教えて!)、何者かになりたかったり、名前を売りたかったり、目立ちたかったり、そのときにしかできない楽しいことをしたい、といった思惑を持つ多くの女性たちが、こぞってキャットファイトに参戦しました。その理由は、リングという華やかで大きなステージに立てること、そこに立てばファンたちから熱い声援を送ってもらえること、ステージの下でもタレント的に扱ってもらえること、ちょっとしたお小遣い稼ぎにもなること、格闘技が好きで試合に出たい、強くなりたい、経験として面白い……人によってさまざまなれど、根本には「闘う女ってカッコいい」という憧れがあったのではないかと思います。
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