人と人との深い関係を理解するのに、属性はそんなに関係ない

そして、リアリズムの小説だからこそ、フロレンティーノ・アリーサの傍らで進行するフェルミーナ・ダーサの結婚生活の描写などに胸を打たれもする。『コレラの時代の愛』は決してロマンチックな物語ではない。76歳と72歳になった2人は確かにベッドインするが、体はお互い老人で、セックスはそんなに上手く行かない。でも、「二人はともに長い人生を生き抜いてきて、愛はいつ、どこにあっても愛であり、死に近づけば近づくほどより深まるということにようやく思い当たったのだ(p.498)」とあるような、ある種の愛の到達点にたどり着く。

私の二次創作はともかく、『コレラの時代の愛』を前にして、所詮は小説じゃないかなどと言っていられないだろう。人と人との深い関係を理解するのに、やっぱり属性はそんなに関係ないと思う。

もしも過去の私と同じようなコンプレックスを抱えている人がいたら、『コレラの時代の愛』を読んでみてほしい。何を見て、何を読んで、何を体験したか。人間を形作るのはそっちのほうだと、たぶん心底理解できる。

Text/チェコ好き(和田真里奈)