すべての行動に、表情に、意味がある……わけない!

ひと昔であれば「オタク」は忌避される存在だったのに、今の若い人たちはむしろ「オタク」になりたがっていると聞く。SNSが全盛で、自分が何かにちょっと詳しくても、すぐ隣を覗けばさらに詳しい人が普通にいる時代だ。そんな時代を生きる中で、自分をどこかに強烈につなぎ止めてくれる存在がほしい気持ちは、少しわかる。

さらにいえば、そんな存在はきっとリアルの「恋愛」じゃダメなんだろう。恋愛は上手くいけば上手くいくほど、すぐに日常になってしまう。そうではなくて、もっと強烈に自分をつなぎ止めてくれるものがほしい。“今の若い世代=清潔一辺倒の優等生”という認識を、『推し、燃ゆ』を読んで私は改めざるを得なかった。

つい「解釈」してしまう日々から私も当分抜け出せないだろうが、ひとつわかるのは、「すべての行動に、表情に、意味がある」なんてことは絶対にあり得ないということ。三次元の人間ならもちろん、二次元キャラだって、「ファンはみんなこう言ってるけど原作者はあんまり深く考えてませんでした」なんてことはいくらでもあるのだろう。

今「推し」がいる人はもちろん、「なんとな〜く中年になっちゃったけど、このままでいいのかな」とぼんやり思っているアラサー・アラフォーの人にも『推し、燃ゆ』はおすすめだ。自分を強烈につなぎ止めてくれる何かがあるのは、楽しくもあるが、苦しくもある。「このままでいいのかな」って考えちゃうくらいが、案外いちばん安定していて、幸せなのかもしれないですよ。

Text/チェコ好き(和田真里奈)