異端の中に本質がある『畏れ入谷の彼女の柘榴』
概要:「異端」をテーマにした短編集。人差し指で命を宿せる子どもを持った夫婦の話、しゃべるカニと猿が出てくる話、人の形をした「心残り」が訪問してくる家族の話の3編。
舞城王太郎の作家デビュー20周年の記念短編集。今回はまさに異端で異譚な、想像もつかない話が収録されています。どれも設定のクセが強いんですが、そこで描かれているテーマには普遍性があって、デコラティブなのに本質が際立ってる感じがします。パリスヒルトンが作った派手ケーキの味が意外と素朴、みたいな。
中でも、人の形をした「心残り」が訪問してくる家族の話『うちの玄関に座るため息』が好きでした。謎の因果で人々の「悔い」や「伝えられなかった想い」が人間の姿でやってきて、家のおばあちゃんに話を聞いてもらうとスゥっと消えていく。昔からずっとそんな「心残り」を見ていた子どもたちは「後悔しないこと」を人生の指針にするわけですが、後悔しないために思考停止してしまったり、諦めてしまったりして「それって結局いいんだっけ?」と。「後悔してもいいから」と思う力強さの魅力について改めて気付かされます。(石島)
10年前に読みたかった『愛を伝える5つの方法』
概要:ベテランの結婚カウンセラーが、さまざまな夫婦にカウンセリングをした末に辿り着いた「愛の言語」について解説。
これヤバい事実なんですが、愛情を感じる行為って人によって全然違うんですよ! この本によると誰しも「肯定的な言葉」「サービス行為」「贈り物」「クオリティ・タイム」「身体的なタッチ」の5パターンのうちどれかを重要視しているそう。プレゼントに愛を感じる人もいれば、物では全く心が動かない人もいるじゃないですか、それです。
パートナーとの愛の言語が異なると「毎日『好き』って言ってるのに全然伝わらんなあ」とか「体ばっか求められてて愛を感じない」っていうミスマッチに繋がるわけです。冷静に考えて致命的すぎる。少なくとも10年前には知っておきたかったんだが? しかもこれ、男女関係だけではなく家族間や友人間でも有効な考え方なので、相手にどうしたら喜んでもらえるか知りたい人ならマジで必読です! 義務教育で教えてくれ!(石島)
『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』
概要:「現金は盗まないが鉛筆なら平気で失敬する」「頼まれごとならがんばるが安い報酬ではやる気が失せる」など、人間の不合理な行動について行動経済学の観点から研究した話題作。
デートは割り勘にするべきか否か。ネットで燃えやすい話題ですが、行動経済学的に言えばデートは割り勘にしないほうが恋愛のムードを保てるらしいです。世の中には、思いやりや暗黙のルールで人間関係を円滑に進める『社会規範』と、金銭のやりとりによるシビアな『市場規範』があって、私たちは自然とそのルールを使いこなしているそう。
例えば、AさんがBさんを食事デートにお誘いしてそのまま奢るのは『社会規範』。あなたに喜んでほしい、という厚意の現れになります。でもその後のデートでなかなか関係が発展しないからと言って「今までのデートでいくら使っていると思っているんだ!」とAさんがキレると、関係性に『市場規範』を持ち込んだことになっちゃうんですね。思いやりで成立していた世界に金銭のルールを持ち込まれて、Bさんは冷めてしまうそうです。
そのほかにも、人間がつい買ってしまう値段の付け方や、男性は性的興奮を覚えると冷静な判断ができなくなってしまう説の検証など、「予想どおりに不合理」な学びに溢れています。実生活で活かせることも多いので、年末年始の学びにぜひ!(石島)
韓国サバイバルオーディション番組「girls planet 999」
概要:日本、韓国、中国の少女たちが繰り広げる2021年最も注目のグローバルガールズグループデビュープロジェクト。現役アイドルや『PRODUCE 48』『Nizi Project』出演者など、ビジュアルと実力を兼ね揃えた参加者たちが集結。応募総数1万3千名の中から選ばれた各地域33名、合計99名から、世界で活躍するガールズグループとしてデビューするのは一体誰か。
自分が選ばれなくても選ばれた相手を祝福する器の広さ、積極性や人望、全力さなど、私たちの普段の生活でもかなり学びになる部分が多い、それがサバ番のいいところ。
ガルプラは特に韓国人、日本人、中国人それぞれ33人が参加していて意思疎通がかなり大変だったと思います。ですが言葉も分からず練習が早くてついていけないと泣く子に対して優しく声をかける子、「自分だけが選ばれて申し訳ない」という子に対して「あなたが頑張ったからよ。私たちのことは気にしないで」と言える子……すげぇや………自分だったら空気を悪くして一瞬で脱落する自信があるぜ!
私の推しは、元々JYPの練習生でデビューできずに夢を諦めかけたけど、最後の挑戦として参加したJ(日本人)グループの坂本舞白ちゃん。彼女がどうなったかぜひ見届けてください。
人間関係を学べる漫画「Artiste/さもえど太郎」
概要:パリのレストランで働く気弱な青年・ジルベール。雑用係として、毎日皿を洗い続ける平凡な日々を送る彼だったが、陽気な新人・マルコとの出会いによって、世界は変わり始める。気鋭の新人が全霊で描く、すべて人々に贈るお仕事青春ストーリー。
最初は皿洗いの下っ端の主人公が天才的な嗅覚と味覚でのしあがっていく料理バトル漫画的なものを想像していました……違うんです、これは人間関係の漫画!!!! 学びがすごい!!!
主人公はおどおどしていて卑屈でいわゆるコミュ障ですがとあることがきっかけで新しい店で副料理長(実質料理長)をまかされることに。かなりクセのある周囲のスタッフやアパルトマンにいる他の芸術家とどう接するべきか悩み嘆きながら模索していく、丁寧な感情の描写や空気感がとても好きです。色々なアルティスト(音楽家、絵描き、ソムリエ、漫画家、作家、歌手など)のキャラが出てきて、それぞれのお仕事事情をのぞけるのも楽しいです。(橋本)
90年代の切ない雰囲気が良い! 映画「ガタカ」
概要:DNA操作で生まれた”適正者”だけが優遇される近未来”不適正者”として自然出産で生まれた若者が適正者に成りすまして宇宙へ旅立とうとするが……。
97年のSF映画ですが、今年初めて鑑賞しました! 不適正者である主人公は宇宙飛行士になるべくあの手この手を模索して……っていう話です。ガタカもそうだけど、ショーシャンクの空にとかオーロラの彼方へとか、90年代〜00年くらいの映画、雰囲気が切なくて美しい作品が多いですね!(橋本)
愛の不時着が好きな人は好きそう!NETFLIXの「恋慕」
概要:時は李氏朝鮮時代。王様の後継である男女の双子が誕生したものの、双子が禁じられていたため、彼女の生母は女児イ・フィを宮外へ追放せざるを得なかった。その数年後、宮女として王宮で仕えることになったフィは、自分とそっくりな顔である後継の兄と再会し……。
韓国ドラマって1話は語り的なのが多くて個人的にハマらず、「愛の不時着」以外脱落してたんですが、これは予告で面白そうだなと思い鑑賞。
あらすじをもう少し話すと、その後兄がなくなり、主人公は兄のふりをするために男装して後継者として育っていくんです。この正体がバレてはいけない&強い女なのに守られる弱さもある感じが『愛の不時着』を彷彿とさせる! あと夢小説で男装逆ハーものが好きだった人は絶対好きだと思います。ただなぜか悪役がやたらとヒゲおじさん率が高く顔も似てるような気がして、最初は混乱するかもしれません。相関図片手に観ましょう!(橋本)
Text/AM編集部
- 1
- 2