二十歳の頃、フリーランスのモデルをしていました。モデルといってももちろん、ランウェイを歩いたり、流行の服に身を包んでファッション誌に登場したりするようなものではなく、SMショーで裸体に蛇を巻かれたり、ボディペインティングでこれまた裸体に絵具を塗られたり、パイ投げの会で半裸にパイをぶつけられたり、足フェチビデオでOL風のコスチュームでバナナを踏みつぶしたりといった、ピンク仕事ばかりを専門に請け負うモデルです。
フリーランスというのは事務所などに属すことなく、「こういう仕事があるけど、する?」と知人から声を掛けられた案件を、興味とギャランティーとリスクとを鑑みて、自分自身で請けるか請けないかを判断してやっていたということで、エロ業界にザブンと身を投じて「脱げます。脱ぎたいです。脱ぎ仕事を募集しています」といった看板を掲げると、いろんな誘いがやってきた。だから別段、事務所に入ったり、マネージャーをつけたりするような必然性は感じなかったし、そもそもわたしが脱ぎ仕事をしていたのは、お金のためよりも、面白さや経験を求めていた部分が多かったので、個人でやるほうが都合がよかったのです。
エロい仕事が女性を傷つけるのではない
本業は別にあったこともあって、金額に関わらず「ウケる」と思った仕事は受け、多少金額的に魅力的であっても「キモい」とか「つらそう」だと思うものは断るようにしていたので、ありがたいことにエロ仕事で嫌な目にあったことはほとんどありません。だから、エロい仕事をすることが女性を傷つけるのではなく、したくない仕事をすることが女性を傷つけるのではないかと思っています。
もちろん、したくないにも関わらず経済的理由などによってエロ仕事をせざるを得ない女性には、救済の手段があって然るべきですが、逆に「エロ仕事をしたい」という女性の気持ちも尊重してほしいと思う……ということはさておいて、「やる」と決めた仕事であっても、途中から少し話が変わってきたり、相手の対応に気分を損ねて、「やっぱり辞~めた!」ということも度々ありました。
一度請けた仕事を後から断ると、信頼問題に関わるし多くの人に迷惑を掛けることも予想できるので、あまりしないようにはしていたけれど、性にまつわる仕事でする嫌な思いは、他の仕事でする嫌な思いとはダメージの大きさが違うのも確かです。ゆえに「断れる」という担保だけは持っておかないと、後から「本当は嫌だったのに……」となってしまうのです。
- 1
- 2