自分のために、同年代の女性たちのために

ところで、最後に謎の告白を。私はこのコラムの中で1箇所、嘘をついた。「誰にも読まれなくてもいいので」と言ったけど、実は私が書いている小説は今、比較的たくさんの人に読んでいただいている。なぜならそれは2次創作であり、もとからある程度の需要があるところに作品を投下しているからだ。設定と市場が借り物なのでだいぶラクしながら書いてるな〜という自覚はあるのだけど、とはいえ「どうしたらこの情景をより上手く書けるんだ?」みたいなことを丸一日考え込んだりしているので、まったく手は抜いていないつもり。

切腹ものなので作品名は明かせないけど、私が好きなジャンルはたぶんファンの年齢層がちょい高く、アラサーからアラフォーの女性がめちゃくちゃ多い。最初は「34歳で2次創作なんて大丈夫かしら」とビビっていたけど、むしろ私はど真ん中世代であった。おそらく、原作中の2人がラブラブほのぼのカップルではなく、責任ある立場の抑制されたカップルなので、いろいろな経験を経たこの年代の女性たちの心を掴むものがあるのかもしれない。

そしてそう、アラサーからアラフォーの女性が多いということは、必然的に、子育て中のお母さんたちがすごく多いのだ。ワンオペ育児が辛いと嘆いているお母さんに「救われました」「大好きです」などのメッセージをいただくと、「自分の性癖が世の(オタクの)お母さんたちの束の間の休息になるなんて、なんてコスパのいい慈善事業なんだ!」と嬉しくなってしまう。真面目なことをいうと、独身女性として発信している「チェコ好き」では言葉を届けきれない層だからこそ、私の書いたものがきちんと届くと、余計に胸が震える。

もう少ししたら助走期間を終えてオリジナルの小説も書いてみたいなと思うけど、しばらくは、自分の癒しのために、そして世のお母さんたちのために、全力で2次創作をやろうと思う。なんか全然違う話になってしまったけど、『小説のように』はすべての女性におすすめできる作品だし、あとは、pixivで私を探さないでください。

Text/チェコ好き(和田真里奈)

初の書籍化!

チェコ好き(和田 真里奈) さんの連載が書籍化されました!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか -女の人生をナナメ上から見つめるブックガイド-』は、書き下ろしも収録されて読み応えたっぷり。なんだかちょっともやっとする…そんなときのヒントがきっとあるはすです。