資本主義と愛の荒波を生きる主人公を描いた『Pink』

Pink 岡崎京子 マガジンハウス 184365 (+1) By martinak15

 本書は沢尻エリカ主演の映画『ヘルタースケルター』(7月14日(土)全国ロードショー.)の原作者、岡崎京子の初期傑作。
 独特の痛々しい青春描写とアヴァンギャルドなストーリーの作風が特徴的な岡崎作品。本書でもその期待は裏切られることなく、奇想天外なストーリー、破天荒な設定、そして無邪気でハッピーな雰囲気の中にも残酷さが潜んだ緊張感で読み手を魅了します。

 昼はOL、夜はペットのワニのエサ代を稼ぐためにホテトル嬢として働くユミ。物語はユミを中心にして、父親の財産を目的に結婚した継母、腹違いの妹ケイコ、継母の愛人ハルヲらの人間模様を描いています。
 継母の追跡をしている間にハルヲと出会い、恋人関係を築くことになったユミ。ワニとケイコを含めた4人でささやかな幸せな生活を手に入れます。しかし、それに嫉妬をした継母がワニを誘拐。ワニはトランクやバックに姿を変えてユミの元へ帰って来るのです。

 本作品では「こんなキレイなものが買えるんなら、あたしは何だってするんだ」、「この世は何でも起こりうる 何でも起こりうるんだわ きっと どんなひどいことも どんなうつくしいことも」、「そんなにお金欲しければカラダ売ればいいのに」…など、刺さるような台詞が印象的です。
 作中に散りばめられた言葉たちは、虚無を感じる世の中への向き合い方を示し、同時に、愛する勇気、生きる勇気を与えてくれます。

書名:『Pink』
著者: 岡崎京子
発行:マガジンハウス
価格:¥1,200(税込)

Text/Yuuko Ujiie