“フツウの幸せ”のハードルを『臨死!! 江古田ちゃん』に学ぶ(2)

最強のモテキャラ女子“猛禽”の発明

臨死!! 江古田ちゃん 瀧波ユカリ 講談社 脱!フツウ 脱フツウ 普通 By J. Lightning

 「脱!フツウ」をテーマにお届けしている今月の「AM」。
この連載では、“フツウ”の恋愛を脱却するための推薦課題図書を4冊セレクトして、みなさんにご紹介していきたいと思います。

 2冊目の今回は、瀧波ユカリさんの漫画『臨死!! 江古田ちゃん』。
2005年に『月刊アフタヌーン』で連載が始まって以来、青年誌にもかかわらず女性の赤裸々な本音を描いた作品として人気を博した作品です。

 主人公の江古田ちゃんは、その名の通り東京都練馬区の江古田駅近辺に住む24歳のフリーター。
“家では全裸”をモットーに自堕落な生活を送り、昼はテレオペなどの派遣OLやヌードモデルに従事。
夜はフィリピンパブのホステスや、トップレスショークラブの踊り子として働くなど、なかなか波乱に満ちた毎日を送っています。

 そんな彼女が鋭い観察眼を向けるのが、女の本音と建前について。
「女子のエールの90%は呪詛でできている」「女の“ほめ”は本音を引き出すための潤滑オイル」と女同士のコミュニケーションの欺瞞をサラリと指摘。
すっかり定着した「草食系男子」という言葉も、「選ばれない理由を全て男のせいにしたい女たちにやさしい言葉」とバッサリ斬ります。

 中でも、この作品の最大の発明と言っていいのが“猛禽”というキャラです。
天然を装い、狙った獲物は逃さない最強のモテ女子を指すこの言葉。
ひと昔前の“ぶりっこ”や“不思議ちゃん”と違うのは、男性がちょうどよく“かわいがりたい”“守ってあげたい”と思うような言動を、ナチュラルに演じることができるということです。
本命男子をオトすだけでなく、雑魚キャラも「友達として好き」などと言って飼い殺すような、全方位に目配せするしたたかさをもあわせ持っている恐るべき存在なのです。