フランス人も占いが大好き!?
夏場は怪談噺や、怖いドラマなどで背筋を凍らせて暑さを乗り切ろうと試みているのですが、怖い話で背筋を寒くすることに成功した試しがありません。 人間以外のものに怖がることで体感気温が下がるというのは本当でしょうか?
是非、科学的に誰か説明してもらいたいもの……などとくだらないことを考えてしまうくらい暑い。 残暑、もう頑張らなくていいんだよ、フェードアウトしてくれていいんだよ。 人間以外のものに声をかけることには抵抗がありません。
さて、フランスには「怪談」というものがあまりありません。 カトリックの国ということもあり、人間以外の存在は神か精霊か、悪魔。 霊魂とかそういった類のものは、哲学の国だからか分析&解体されて、「ああ、どうせ精神的プレッシャーによる脳の錯覚でしょ」みたいに一笑に付されてしまうことが多いです。
実際友人たちも、「占いなんて気色悪っ」「暇な金持ちがやること」などと忌避していました。 よって、スーパーパワーやスピリチュアルで未来を見通す「占い」も信じない人が多い……と思いきや 実は占い大好きです、フランス人。
占いタウンページと化す、占い師広告
テレビ番組雑誌とか、主婦が読むような雑誌とか、ファッション誌には、日本と同じように占いでいっぱい。 採用時に占いが関わる企業もあったり(もちろんそんなこと公にはできないのですが)するため、履歴書に生年月日や血液型を書かないように指導する職業訓練校も。
特に目につくのが、占い師の広告。 「あなたの未来透視します! お悩みがある方はこちらに今すぐtel!」的な3行広告がフリーペーパーや娯楽雑誌でずらっと並ぶのです。 大抵の占い師が”voyant”と名乗っているので、未来を透視する人たち(”medium”と名乗る人もいるのですが、それは占いというより霊媒師なので少数派)。
まるで弁護士相談か、借金返済問題かというくらいぎっしり電話番号が並んでいて、タウンページのようです。
カトリックの国とはいえ、フランス文化を反映させてカトリック派としてプロテスタント派を虐殺したことで有名な、王妃カトリーヌ・ド・メディシスすら政治を占いに頼るほどの占い好き。 皇帝ナポレオンも占いが好きで、「クレープ占い」なる可愛らしいもので戦争の結果を占っていたとか。 合理的で理屈好きなフランスにおいても、歴史的に占いが根付いていたことが垣間見えます。
「適当に見てもらう」日本人、「見てもらうなら本気」のフランス人
しかし、日本とフランスの「占い」には大きな違いがあります。 それは「本気度」です。 そもそも、土壌として、一般的に理屈が通らないとされる類の占いは、雑誌で読むくらいならよいとしても、実践すること自体には抵抗があるため、そこに手を付けようとするのは「よっぽど」なのかもしれません。
ちょっと例えは悪いですが、フランスにおける占いの扱いは、日本における性風俗のそれと似ているかと思います。 先ほど触れた、占い師の3行広告は安い雑誌の後ろのほうに隠れるように、しかしズラッと掲載されています。 その電話番号はほぼ全て有料番号で、昔のダイヤルQ2のよう。
一方で、専門書店もあるのですが、「学術書店」として存在しています。 「占いをどう科学するのか」。 科学的分析に基づいた、真面目な学問としてのみ、表立って表現することを許されている感じも、日本の性科学書籍専門店と似ています。 ちょっと街角で占ってもらっちゃおうかな、などと気軽に試すことができる日本の土壌とは異なる部分が……。 特に、成就もしてない以前の恋愛相談などは、占いにたよらなくても自分の努力でどうにでもできるものなので、そもそも何かの宣託にかける必要性がないような雰囲気があります。
そんな暇あるなら、テク磨けよ、という。
フランスではちょっぴり薄暗いイメージがあるからこそ、そこに手を付ける人は本気。
日本ではあけっぴろげにできるから、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」とお気軽手軽に手を付ける。 どちらにも良さがありますが、大事なのは占いに自分の人生を乗っ取られない事。 結局人生を決めるのは、自分自身でしかないのだから……。 などとクールぶって〆ようと一瞬思いましたが、僕は「占い」は決して非科学的なものでもなく、ものすごい統計学や認知心理学に基づいた結構な「科学」だと思っている派です。
そこまでの「占い師」は自分の知っている限り、数えるほどしかいませんが、そういう人に一度占ってもらいたいものだと思うのですが、高額な占い料金が払えません(涙)。
記事にするので、どこかの編集部さん! 企画&体験させてください!
コラムで公にこんな売り込みをするしがないライターの将来を占ってもらいたいものです……。
Text/Keiichi Koyama