童貞の支配する国ニッポン、性=生のフランス

By ValentinaM- By ValentinaM-

 セックスを健康問題と捉え、産後の下腹部回復医療(最近は「膣トレ」みたいに言われていますが、膣だけの問題ではありません)は保険診療で受けられるフランス。

 某日本放送協会が朝の番組で「膣トレ」を取り上げたときの、他メディアの反応は異常なものでした。「朝から下半身の話とは下品」「世も末」「NHKがエロ路線」などなどひどいもの。ネットの掲示板並みの過剰反応。こういうのはまさに「童貞根性」。
女性の性に関する話になると途端に嘲笑したり、逆に隠そうとしたり、眉を顰めたりするのは、真っ直ぐに性と向き合ったことがないから。というか、経験が浅く(回数の問題ではなく)、理解度が足らないから。童貞の支配する国、ニッポン! 若干ウンザリします。

「性」と向き合うことは「生」と向き合うこと

 話が逸れましたが、フランスにおいて感じられることは「性=生」。 2007年にコンドーム企業が調査した結果、充実した生活“Bien Vivre”を送るために、より健康的な性生活が必要だと感じている人は80%以上だそう。日本では15%ほどだったそうです。
 
 性とは健康。だからこそ、医療保険が産後機能回復に適用されるのです。国が援助するべきものであって、ましてや隠すものでもなんでもない。だって、国民の健康のためなんだもの。

 産後の機能回復は決して性機能を回復し、性生活をよりよいものにするためだけのものではありません。自分は女性ではないので、情報による知識しかありませんが、妊娠分娩による体力の消耗、ホルモンの急激な変化による疲労、骨盤のゆがみによる尿漏れ、腰痛、足のつけ根の痛み、痔、排せつコントロール力の低下などなど、様々な危険が伴います。 よく考えてみたら、骨盤に赤ちゃん1人分以上の重みが常にかかっているわけなので、いろいろ問題が出てくるのも当然。「出産なんて大抵の女性はしてきたんだから、大した問題じゃない」こういった浅薄な思考が根底にあるような気がします。

少子化対策より先に女性のことを

 日本ではピルすら保険診療にならない場合が多いのと比べ、女性の健康とパートナーシップの感覚は、人口増加に成功しているフランスに圧倒的な軍配が上がります。
 ただ、一つだけ人口増加の目的のために女性は出産するわけではありませんし、産まない選択ももちろんあっていい。「産めよ増やせよ」というキリスト教的思想、また「人口=国力」とする考え方には、一人一人の個人の人生を、国の利益のためにコントロールする意識が透けて見え、もろ手を上げて賛成とはいかないところ。
「別に人口が減っても、合計特殊出生率が減っても、それはそれでいいじゃない」と、そんな考えに基づいてあえて、性にまつわる健康を無視しているのなら、それはそれで天晴かなと思いますが、まあ、そんなひねくれた深い考えはないでしょうね。

Text/Keiichi Koyama