長年付き合った恋人には、ときめかなくなったけど安心はする。これでいいと思ってたはずなのに、すごくタイプの人が現れたら?
ときめきと安心、すぐにどちらか選べるでしょうか。
選べなくて、いつの間にか「浮気」なんて状態になる可能性、ないでしょうか。
そんなリアルな「オンナの浮気」が描かれた『恋のツキ』。
作者である新田章さんに、制作秘話から、浮気をしてしまう女の気持ちをうかがいました。
『恋のツキ』あらすじ
平ワコ31歳。3年同棲している彼氏・ふうくんとは、マンネリ気味。そんなとき、バイト先の映画館で超タイプな男子高校生、伊古くんに出あってしまい…!?
恋人が、別の人にときめいてる
―『恋のツキ』が描かれることとなった経緯を教えてください。
新田先生(以下N):『あそびあい』が終わって、次作をどうしようかと話し合ったときに、“大人の恋愛もの”にチャレンジしてみようという話になり、私が30代で、同棲経験が何度かあったので「では、同棲の愚痴を描こう」と『恋のツキ』が決まりました。
『あそびあい』あらすじ
機会があれば誰とでもセックスしちゃう女子高生・小谷と、そんな彼女を独占したい同級生の山下くんとのラブストーリー
―そうなんですね。主人公のワコが浮気をすることは決まってたんですか?
N:そうですね。私が映画が好きなので、主人公は「映画館でもぎりのバイトをしている女の子」という設定はありました。で、相手はそこにくる小学生。
彼氏とは体の関係はあるけど、精神はピュアな小学生に惹かれてしまう、という話にしようかなと思ったんですが…。
―小学生!? 若い!
N:ですよね(笑)。それを担当さんに伝えたら、「新田さん、小学生相手に本当に恋ができますか?」と言われて、「あ、無理です」と(笑)。それで、高校1年生になりました。
―なるほど。ワコの同棲相手である「ふうくん」がすごくリアルですよね。
N:一応、モデルとなる男性はいて。
でも、あまりダメな人だと、「浮気されて当然じゃん」と言われてしまうので加減してますね(笑)。
―ワコが今の関係に不満を抱いているのに、「俺と結婚するでしょ?」と当然のように言うふうくんにシビれました(笑)。
N:彼は内弁慶で、ワコにだけ強く出れるんじゃないかなと思います。でも、同棲が長くなると、だいたいの男性は安心しだし、女性は不安になりだす傾向にありますよね。
―ワコのモデルはいるんですか?
N:私をある程度反映させています。けど、私よりかなり慎重ですね(笑)。
新田さん担当編集のYさん(以下Y):どのへんがですか?
N:ワコは今のところ、最後の一線は踏みとどまっているので。私は「ヤっちゃえばいいじゃないか、なんでここまできてためらうんだ!」って思いながら描いてます。
Y:確かにいつも言われます(笑)。
―あはは! でも、『恋のツキ』はそういうところがすごく斬新ですよね。女性が浮気される側じゃなく、する側っていうのが。
Y:たしかに、ここ最近になって、ちょこちょこ出てきましたよね。
N:女性が強くなったのかもしれないですね。
―読者からの反響はいかがですか?
N:男性からは「おもしろ怖い」と言われることもあります。
自分の彼女がこんなふうに思ってるんだとか、バレてないだけで浮気していたかもしれないとか。男性がワコに自己投影して読んでいただくことも多いようです。
とりあえず、私は「恋人が自分の知らないところで誰かにときめいてるよ」というのを出せればなぁと思って描いてますね。
Y:女性からの感想を読んでいると、「女性って男性に対してこんなに怒ってるんだな」というのがよくわかります。
―『恋のツキ』や『あそびあい』って、反発を感じるひともいる作品なのかなと思いますが。
N:『あそびあい』のときは「こんな汚らわしい漫画はやめろ!」とお怒りのお手紙をいただくことがあったり、「燃やしました」とおっしゃってた方もいました。でも、買ってくれたってことだし、古本屋に売らずに燃やすなんて、いい人なのかもしれないです!
―やっぱり「浮気は許せない!」って気持ちから、抗議されるんですかね。
N:どうなんでしょう。でも、「浮気をしてメンタルを保ってる人」もいるでしょうし、「浮気をしないことでメンタルを保っている人」もいるでしょうし。
だから、どっちの考えが正しいとかではないのかなと思います。